[III-OR24-04] 気管軟化症に対するLecompte手術有用性の検討
キーワード:気管軟化, Lecompte, VCS
【背景】気管軟化症は気管の内腔が保たれず閉塞症状をきたすものと定義されるが,その成因として気管軟骨の構造異常と大血管などによる外部からの圧迫(血管圧迫症候群 vascular compression syndrome; VCS)がある.一方Lecompte手術は大血管転位症のスイッチ手術に考案された方法だが,VCSによる気管軟化症に対しても有効と報告されている.【目的】気管軟化症に対してLecompte手術を行った症例で術前後の大動脈と気管の形態を評価して同手術の妥当性を検討する.【方法】CT検査で術前後の気管支内腔径,上行大動脈-下行大動脈間距離(AAo-DAo),肺動脈径を計測して検討する.【結果】症例は5例で手術時年齢(m)5.5±2.8(0.6-8),体重(kg)5.1±1.5(2.8-6.7).診断はTOF, 肺動脈弁欠損3例,TOFと特異な形態肺動脈1例,CoA complex1例.Lecompte手術は3例に心内修復術と同時,2例に再手術として行った.右左大動脈弓では同側の気管閉鎖が多く,全例で上行大動脈と下行大動脈間に肺動脈および気管支が圧迫される形態であった.術前の肺動脈径/AAo-DAo は 0.69±0.13(0.42-0.84)でretroaortic spaceの大半を肺動脈が占め,術前の気管支内腔径/AAo-DAo 0.01±0.02(0-1)は術後0.33±0.06(0.21-0.44)と大きく改善した.術前4例が気管支完全閉鎖だったが術後気管支内腔径(mm)1.7±1.3(0-4)と改善, 4例に気管吊り上げや大動脈吊り上げを追加もしくは同時手術として行い自然気道で退院し,Lecompte手術のみの1例は気管切開を要した.【考察】Lecompte手術によって上行下行大動脈間で気管支に十分な空間が確保できたが,気管支の十分な開大と症状改善には気管支吊り上げや大動脈吊り上げを必要とした.【結論】気管軟骨の変形や大動脈以外のリンパ組織など周囲組織による気管支圧迫要因もあり,VCSによる気管軟化症に対してはLecompte手術のみでなく気管支組織牽引を併施することが必要であると考えられた.