[III-OR27-02] 感染性心内膜炎における右心系と左心系の予後比較、適切な手術時期の検討
キーワード:感染性心内膜炎, 先天性心疾患, 脳梗塞
【背景】小児先天性心疾患(CHD)の感染性心内膜炎(IE)は右心系IEが多い。本邦の「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」では、IEの手術適応と緊急度は、心不全の程度・治療抵抗性・塞栓リスクにより決定されているが、右心系と左心系IEとで、手術適応は同じ基準とされる。
【目的】右心系と左心系IEの予後を比較し、適切な手術時期を検討する。
【方法】2004年から2023年度までの20年間、当院で治療したIE患者を診療録から後方視的に抽出した。右心系IEをR群、左心系(単心室症例も含む)をL群とし、患者背景、塞栓症状の有無、手術介入のタイミング、生命予後と神経学的予後を比較検討した。血液培養は陽性であったが疣贅が不明で、発熱以外の症状がない症例(Duke診断基準でpossible)は除外対象とした。
【結果】対象は21例(R群:14例,L群7例)であり、除外対象は10例であった。年齢は0-21歳(中央値R群:10歳,L群:2歳)。R群は全例CHD患者であり、心内修復術後もしくは左右短絡が存在した。L群は基礎疾患のない症例が4例、単心室2例、ファロー四徴術後が1例であった。IEに対する手術はR群:3/14例、L群:3/7例で実施された。手術時期については、R群は人工物に疣贅があり待機的に手術を行った症例が多かったが、L群は塞栓症状のため準緊急で手術が施行された。梗塞はR群で9/14例(64%)に肺塞栓を認め、L群では7例中全例で脳塞栓を認めた。7例中2例は神経学的後遺症を認めなかったが、4例で片麻痺や神経症状が残存し、1例は広範な脳梗塞により死亡した。疣贅径はL群:8-11mm(8.5)、体表面積補正ではL群5.7-46.5mm/m2(13.8)であった。
【結論】10mm以上の可動性疣贅を認めた場合は手術介入が推奨されているが、10mm未満であっても左心系IEでは重篤な脳梗塞を生じる症例が存在した。左心系IEは脳梗塞を発症する可能性が非常に高く、疣贅は体表面積補正も考慮し、症状を来す前に手術に踏み切る決断も重要である。
【目的】右心系と左心系IEの予後を比較し、適切な手術時期を検討する。
【方法】2004年から2023年度までの20年間、当院で治療したIE患者を診療録から後方視的に抽出した。右心系IEをR群、左心系(単心室症例も含む)をL群とし、患者背景、塞栓症状の有無、手術介入のタイミング、生命予後と神経学的予後を比較検討した。血液培養は陽性であったが疣贅が不明で、発熱以外の症状がない症例(Duke診断基準でpossible)は除外対象とした。
【結果】対象は21例(R群:14例,L群7例)であり、除外対象は10例であった。年齢は0-21歳(中央値R群:10歳,L群:2歳)。R群は全例CHD患者であり、心内修復術後もしくは左右短絡が存在した。L群は基礎疾患のない症例が4例、単心室2例、ファロー四徴術後が1例であった。IEに対する手術はR群:3/14例、L群:3/7例で実施された。手術時期については、R群は人工物に疣贅があり待機的に手術を行った症例が多かったが、L群は塞栓症状のため準緊急で手術が施行された。梗塞はR群で9/14例(64%)に肺塞栓を認め、L群では7例中全例で脳塞栓を認めた。7例中2例は神経学的後遺症を認めなかったが、4例で片麻痺や神経症状が残存し、1例は広範な脳梗塞により死亡した。疣贅径はL群:8-11mm(8.5)、体表面積補正ではL群5.7-46.5mm/m2(13.8)であった。
【結論】10mm以上の可動性疣贅を認めた場合は手術介入が推奨されているが、10mm未満であっても左心系IEでは重篤な脳梗塞を生じる症例が存在した。左心系IEは脳梗塞を発症する可能性が非常に高く、疣贅は体表面積補正も考慮し、症状を来す前に手術に踏み切る決断も重要である。