[III-P01-1-06] 気道感染症を契機に脳静脈洞血栓症を発症した両方向性グレン術後症例
キーワード:脳静脈血栓症, 両方向性グレン, リバーロキサバン
【背景】脳静脈洞血栓症(Cerebral Venous Sinus Thrombosis, 以下CVST)は小児期の発症は稀ながら, 神経学的後遺症の発症率・死亡率の高い重症疾患であり, 早期発見・介入が求められる. 【目的】両方向性グレン(以下BDG)後にCVSTを発症した例の経過, 抗凝固管理にリバーロキサバンを用いた経験を共有する. 【症例】0歳11ヵ月の男児. 原疾患はUnbalanced AVSD TGA PS. 他院にて房室弁形成術を繰り返し, BDG+PA tight bandingに至った. 気道感染(Rhino, Entero virus)による全身状態の悪化で当院のPICUに入床した. 当初は呼吸不全に加えて心収縮低下(EF30~40%), 高い内頸静脈圧(20mmHg)を伴う重度の心不全であった. 集学的治療により状態は改善し入床6日で抜管, 16日に紹介元に転院となった. 抗凝固としてヘパリン12unit/kg/hを継続していた. 程なく左共同偏視が指摘され, 転院3日に脳出血が判明したことから再度当院のPICUに入床した. CVSTと多発性脳出血と診断された. 発症時期が明確でないことから出血の増悪が懸念され, 治療を目的としたヘパリン量は第Xa因子レベルを基に慎重に調整された. 治療開始13日のMRIで静脈洞内の血流増加が確認された. 22日より抗凝固はリバーロキサバン(静脈血栓症治療量)に切り替えられた. 内服開始にあたり, 合併症対策として拮抗薬アンデキサネットアルファを準備した. 幸い出血性合併症は認めず静脈洞内の血栓は改善した. 治療と平行して共同偏視, 右半身不全麻痺に対するリハビリを継続している. 【考察】CVSTの原因として, 感染症或いは低心拍出, 低酸素血症による凝固異常をきたしていた可能性がある. BDG循環不全による血流の鬱滞が関連した可能性もある. 血栓形成と出血リスクが高く, かつワーファリンによるPT-INRの安定維持が困難な乳児であったため, 抗凝固としてリバーロキサバンを選択した. 本例の経過からは有効かつ安全に用いることができたと考えられる.