第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター発表(III-P01-4)
その他1

2024年7月13日(土) 09:00 〜 10:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:坂崎 尚徳(兵庫県立尼崎総合医療センター 小児科)

[III-P01-4-06] エンドセリンシグナルは動脈管のリモデリングを抑制する可能性がある

吉田 賢司, 井上 天宏, 南沢 享 (東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

キーワード:動脈管開存症, 解剖学的閉鎖, ET-B

【背景】PGEはEP4シグナル賦活化でcAMP産生増加から動脈管拡張を生じる。一方PGE2-EP4シグナルはPKAを介してHA産生を亢進させ、動脈管内膜肥厚形成を生じることで動脈管閉鎖にも寄与する。動脈管の収縮弛緩に関わるシグナルは血管リモデリングにも関わる可能性があるが、PGE2-EP4シグナル以外の血管作動物質では解明されていない点も多い。動脈管の酸素に対する収縮反応はET-1が調節する。ET-1にはET-AとET-Bの2つの膜受容体が存在し、後者は内皮細胞で血管拡張に関与するETB1と、平滑筋で血管収縮に関与するETB2に分類される。またET-BはET-1のスカベンジャーであり、ET依存性の血管収縮を阻害するとされる。
【目的】ETシグナルは動脈管のリモデリングを抑制するという仮説を立て、これを検証する。
【方法】Wistar ratの平滑筋培養細胞を用いて、ET-1、ET-A、ET-Bの発現量をRT-PCR法で比較した。またHA産生制御に関わる因子がないか、化合物添加下で上清中のHA定量を行った。
【結果】組織間で遺伝子発現量に有意差はないが、ET-B発現量は低値であった(n=4, p<0.01)。ET-1を添加するとHA産生は有意に抑制された(n=4, p=0.03)。
【考察】正常ラット動脈管ではET-Bは低発現であった。しかし、近年網羅的遺伝子発現解析からPDAのヒト動脈管中膜組織でET-Bの発現増加がみられたとの報告があった。さらに母のZIKA virus感染症では子供にPDAを生じることがあり、母体ET-Bの発現低下が報告されたが、動脈管組織のET-B発現は不明だった。本研究ではET-1刺激でHA産生が抑制されたことから、何らかの契機でET-Bの過剰発現が生じた場合PDAを呈する可能性があることが示唆された。今後、ET-AやET-Bシグナルが動脈管のリモデリングへ及ぼす影響について、それぞれの遺伝子発現を変化させた動脈管平滑筋細胞や組織でPDAとの類似性を確認する必要があると考えられた。
【結論】ETシグナルは動脈管のリモデリングを抑制する可能性がある。