[III-P01-5-01] 総肺静脈還流異常症およびその類縁疾患の修復におけるEndocardial anchoring法の有用性について
キーワード:総肺静脈還流異常, 直接吻合法, 改良術式
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVR)およびその類縁疾患の修復にあたり,われわれは直接吻合法(conventional法)の適応を拡げる術式としてEndocardial anchoring法を考案した.本法は,切開した共通肺静脈壁を左房内に引き込みつつ左房切開線から離れた心内膜に縫着する手技で,縫合線の突出がない滑らかな還流路を実現すると同時に,共通肺静脈壁に対する牽引力が還流路の開口を補助・維持する効果も期待される.
【目的】本法を施行し良好な結果を得た3症例を手術動画とともに供覧し,術式のポイントと適応範囲について検討する.
【症例1】月齢2,男児,TAPVR IIa型.冠静脈洞のcut backに際し,右側縁からL字に切開をおくことでフラップを作製,これを翻転して牽引しつつ僧帽弁前庭の左房内膜に固定して還流路を作製.
【症例2】月齢10,男児,両大血管右室起始,左室低形成,僧帽弁閉鎖,総肺静脈還流異常 Ia型(共通肺静脈と左房にpin hall様の交通孔あり).新生児期に肺動脈絞扼と心房間交通拡大を施行,グレン術待機中に垂直静脈の狭窄が進行したため介入.共通肺静脈-左房間の交通孔を起点に両者をV字型に切開,ここから共通肺静脈壁のフラップを左房内に引き込んで内膜に牽引固定して還流路を作製.
【症例3】1歳3ヶ月, 男児, TAPVR III型, 直接吻合による修復後遠隔期の吻合部狭窄(平均圧較差 7mmHg)に対し再介入.開口部より左房と共通肺静脈を二方向に切開,三角形に開口した共通肺静脈壁の三辺をいずれも左房内腔に牽引固定して還流路を作製.
【考察】いずれの症例についても術後は十分なサイズの還流路が得られ,乱流のないスムーズな血流が確認された.肺静脈血還流路の最狭部から縫合線を遠ざけるという本法のコンセプトは,sutureless法と共通している.本法は,conventional法では対処が難しい形態に対して特に有効である一方,末梢肺静脈狭窄の解除には寄与しない点が適応の限界と考えられた.
【目的】本法を施行し良好な結果を得た3症例を手術動画とともに供覧し,術式のポイントと適応範囲について検討する.
【症例1】月齢2,男児,TAPVR IIa型.冠静脈洞のcut backに際し,右側縁からL字に切開をおくことでフラップを作製,これを翻転して牽引しつつ僧帽弁前庭の左房内膜に固定して還流路を作製.
【症例2】月齢10,男児,両大血管右室起始,左室低形成,僧帽弁閉鎖,総肺静脈還流異常 Ia型(共通肺静脈と左房にpin hall様の交通孔あり).新生児期に肺動脈絞扼と心房間交通拡大を施行,グレン術待機中に垂直静脈の狭窄が進行したため介入.共通肺静脈-左房間の交通孔を起点に両者をV字型に切開,ここから共通肺静脈壁のフラップを左房内に引き込んで内膜に牽引固定して還流路を作製.
【症例3】1歳3ヶ月, 男児, TAPVR III型, 直接吻合による修復後遠隔期の吻合部狭窄(平均圧較差 7mmHg)に対し再介入.開口部より左房と共通肺静脈を二方向に切開,三角形に開口した共通肺静脈壁の三辺をいずれも左房内腔に牽引固定して還流路を作製.
【考察】いずれの症例についても術後は十分なサイズの還流路が得られ,乱流のないスムーズな血流が確認された.肺静脈血還流路の最狭部から縫合線を遠ざけるという本法のコンセプトは,sutureless法と共通している.本法は,conventional法では対処が難しい形態に対して特に有効である一方,末梢肺静脈狭窄の解除には寄与しない点が適応の限界と考えられた.