[III-P01-5-05] 部分肺静脈還流異常症修復術後の長期成績と術後肺静脈閉塞症例の検討
キーワード:部分肺静脈還流異常症, scimitar症候群, 肺静脈閉塞
【背景】部分肺静脈還流異常症(PAPVR)修復術の手術成績は術式の改善により向上してきている。当院における多様な術式のPAPVR修復術後長期成績を検討した。【方法】1984年から2023年に当院でPAPVR修復術を施行した連続12例を評価した。手術時年齢と体重の中央値は7.0歳 (IQR 5.2-9.8)、20.0 kg (IQR 14.9-39.1)。上心臓型 7例 (右上肺静脈-SVC 6例、右上肺静脈-SVC+左上肺静脈-無名静脈 1例)、心臓型 (右肺静脈-右房) 1例、scimitar型4例であった。合併心奇形はASD 9例、PLSVC 3例、弁性PS 1例を認めた。【結果】フォローアップ期間中央値は15.1 年 (IQR 10.4-16.0、最長24年)。術式は上心臓型: Warden法 3例、Williams法 1例、one-patch法 2例、左上肺静脈-無名静脈型: 垂直静脈-左心耳の直接吻合1例。心臓型: one-patch法 1例。Scimitar型: 右房内トンネル+IVCパッチ拡大3例、右肺静脈-心房直接吻合+心房内血流転換1例。パッチは上心臓型1例を除き新鮮自己心膜を用いた。術後死亡症例なし。全例洞調律で有意な不整脈なし。体静脈閉塞なし。術後肺静脈狭窄(PVO)はscimitar型で2例あり、初回手術41日後、1年5ヶ月後に認めた。41日後に閉塞した症例は、初回手術2ヶ月後に外科的再介入したが1年後に再閉塞した。いずれの症例も閉塞判明時は無症状であったが、再介入14年後と初回手術1年8ヶ月後とに喀血を生じた。PVO回避率は、1年/3年/15年で91.7/81.5/81.5%、scimitar型では75.0/37.5/37.5%であった。【考察】上心臓型に対する各術式において有意な合併症はなかった。Scimitar型に対する右房内トンネル作製は術後早期に右肺静脈-IVC流入部でPVOをきたし、クランク状還流路再建に問題があると考えられた。Scimitar型の直接吻合例は術後16年の開存は確認された。【結論】PAPVR術後遠隔期予後は良好であった。Scimitar型はPVO回避のための術式の工夫や、解剖学的に許容される場合は心房への直接吻合を検討すべきかもしれない。