第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(III-P02-2)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患1

2024年7月13日(土) 10:00 〜 11:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:武内 崇(海南医療センター 小児科)

[III-P02-2-03] 病理解剖で強皮症様の所見を認めた特発性肺動脈性肺高血圧症の1例

小山石 隼1, 相馬 香奈2, 橋本 礼佳1, 三浦 文武1, 嶋田 淳1, 北川 陽介1 (1.弘前大学 医学部 小児科, 2.弘前総合医療センター 小児科)

キーワード:特発性肺動脈性肺高血圧症, 全身性強皮症, 消化管の線維化

【緒言】肺高血圧症(PH)の診断に際しては、原因となり得る結合組織病(CTD)などの存在を検索した上で、的確な治療方針を計画する必要がある。【症例】13歳女児。気管支喘息、てんかん、アトピー性皮膚炎に対し前医通院中であったが、歩行時の息切れを契機に超音波検査でPHが判明した。当科へ紹介後、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)と診断された。身体所見、及び血液検査等から、全身性強皮症(SSc)を含めCTDは否定的であった。支持療法に加えて3系統の肺血管拡張薬の併用を開始したものの、薬剤の増量や変更を行ってもPHは徐々に進行していった。エポプロステノールナトリウムの持続静注や肺移植は同意されなかった。22歳時に心室性不整脈を契機に死亡した。【病理】肺血管および心臓については、それぞれIPAHとそれによる慢性肺性心に矛盾しない所見であった。しかし、食道から直腸に至る消化管全域の粘膜下層において著明な膠原線維の増生を認め、SScの患者で認められる病理所見と類似していた。ただし消化管以外に、SScを示唆する所見は、皮膚を含めて認められなかった。【考察】本症例はSScの診断基準を満たさないため、消化管の線維化は、SScとは別の病態によって生じた可能性がある。Fontan循環の剖検例で同様に消化管の線維化を認めた症例報告があり、本症例の経過も合わせて考慮すると、長期間の静脈うっ滞が同所見を招いた可能性が示唆される。一方で、本症例が若年女性であることを加味すると、IPAHと考えられている患者の中には、将来的にSScを含めたCTDを発症する素因を持つ患者が含まれている可能性もある。【結語】臨床的に、SScに伴う肺高血圧症(SSc-PH)が否定的であるIPAH患者に、SScと類似する消化管の著明な線維化を認めた。現時点においてその機序は不明であり、病態解明には病理学的な面を含めて更なる症例の蓄積・検討が必要である。