第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(III-P03-2)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患2

2024年7月13日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:土井 拓(どいキッズクリニック)

[III-P03-2-05] 経口治療薬のみで管理できる特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症の特徴

清水 由律香, 小柴 未央, 川村 悠太, 川合 玲子, 高月 晋一 (東邦大学医療センター大森病院 小児科)

キーワード:遺伝性肺動脈性肺高血圧症, 特発性肺動脈性肺高血圧症, エポプロステノール持続静注

【背景】 肺動脈性肺高血圧症においてepoprostenol持続静注療法を回避し、経口薬で管理されている症例が増加している。
【目的】特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAH)で、経口薬のみで治療され臨床的増悪のない症例の特徴について検討した。
【方法】経口薬で治療開始され5年以上経過観察したI/HPAH症例を対象とした。経口薬のみで臨床的増悪のない症例(epoprotsenol静注併用・心不全入院・肺移植登録および移植施行・心臓死のいずれもない症例:Oral therapy : OT群)と臨床的増悪のあった症例(clinical worsening : CW群)に分け、患者背景、転帰、肺循環動態について後方視的に評価した。
【結果】 対象は25例(女性14例)でCW群は17例(68%)であった。発症年齢は9歳、IPAH21例・HPAH4例(BMPR2遺伝子変異3、ALK1遺伝子変異1)、HPAHは全例CW群に含まれていた。12年(5-22年)の経過観察中、CW群は入院を要する心不全8・静注薬併用14・移植登録1・心臓死3・脳死1例で、静注薬併用は経口薬開始から中央値で4年(1-15年)であった。CW群(17例)では5例が検診、12例が心不全・失神・喀血を契機に診断され、OT群(8例)は全例検診で診断された(検診8例 vs 5例, p<0.05)。2群間で治療開始前の平均肺動脈圧(59.9 vs 59.7 mmHg, p=0.68)、PVRI(18.7 vs 17.0 wood unit・m2, p=1.0)、SVi(32.9 vs 38.3ml/m2, p=0.15)は有意差を認めなかった。治療開始後初回のカテーテル検査(中央値11:1-70か月)では、OT群に比してCW群では平均肺動脈圧は高く(67.5 vs 55.0 mmHg, p=0.09)、SViは低い(33.2 vs 39.5 ml/m2, p=0.07)傾向があり、治療開始1年のBNPが有意に高値であった(120.8 vs 13.0 pg/ml , p<0.05)。
【結語】経口薬で治療開始した症例の68%は臨床的増悪があった。HPAH症例、治療開始後のBNP値や肺循環動態の改善が乏しい症例ではepoprostenol持続静注療法を検討すべきである。