[III-P03-3-04] 短期間に乳頭筋肥厚が進行し重度僧帽弁狭窄によるOver systemic PHを来たした乳児例
キーワード:僧帽弁狭窄症, 肺高血圧症, 乳頭筋異常
【背景】肺高血圧(PH)の原因は様々あるが、臨床分類第2群にあたる左心系心疾患に伴う肺高血圧症には、先天性/後天性の左室流入路閉塞が含まれている。また僧帽弁異形成が原因の場合には外科的修復術なしでは重篤な予後をたどる。今回、短期間に乳頭筋肥厚が進行し重度僧帽弁狭窄(MS)によるOver systemic PHに対して外科的介入を行いPHが改善した症例を経験したので報告する。【症例】生後4ヶ月、女児。在胎40週、3,288gで出生。日齢1に心雑音を指摘され多孔性筋性部心室中隔欠損(mVSD)と診断された。短絡量はわずかで心拡大はなく、左室流入血流速度(TMF)は85cm/sと正常であった。生後1ヶ月、3ヶ月では体重増加良好でmVSDはわずかに開存している状態であったがMSは認めなかった。生後4ヶ月にチアノーゼ出現、心エコーでは両側乳頭筋は筋性に肥厚癒合しており、TMFは3.02m/s(平均圧較差14mmHg)と著明なMSを来たしていた。mVSDは閉鎖しており、左室流入血流の高度制限による左心低形成(LVDd62%N、AoV68%N)とOver systemic PHを認めた。生後5ヶ月に外科治療介入、前後乳頭筋の連続癒合した肥厚組織と乳頭筋付着部の増生した筋組織を切離した。術後は左心低形成やPHは速やかに改善した。背景疾患の検索に染色体検査などを精査中である。【考察】出生時に明らかな僧帽弁・乳頭筋異常は認めなかったものの、短期間の経過で急速なMSからOver systemic PHを来たした症例を経験した。本症例はmVSDを介して低圧に逃げていた血流が、mVSDの狭小化に伴い左室のみが受ける形となり、潜在的な乳頭筋異常が顕在化した可能性が考えられた。左室流入路閉塞性PHに対しても閉塞基点解除でPHは可逆性に解消されており、速やかな診断、治療介入が本病態には有用であった。