[III-P03-4-09] 小児期心房中隔欠損症に合併する肺高血圧症における左室拡張障害の影響とその管理
キーワード:肺高血圧症, 心房中隔欠損症, 拡張障害
背景:心房中隔欠損症(ASD)の一部は小児早期から肺高血圧症(PH)を呈する. 背景に慢性肺疾患や遺伝性疾患等の肺障害が挙げられるが, 左房圧上昇もPHに寄与する可能性がある. 血行動態評価を行った平均8歳のASD54例の解析では, 右室圧はQp/QsやQpとは独立して左房圧と強く関連し(p=0.0096), 左房圧上昇は両心室の拡張末期圧上昇と関連した. これは拡張障害と右室圧の強い関連を示唆するが, 高度PHにおいて心室拡張障害の影響には不明な点が多い. 拡張障害が疑われる2症例に対して積極的に水分管理を行った症例を提示する. 症例:生後4か月, 内臓逆位, 横隔膜ヘルニア術後および生後6か月, 23週で出生した超低出生体重児・慢性肺疾患の2例. NICU退院時にASD, PHに気づかれ, また酸素飽和度が80%以下にしばしば低下することから在宅酸素療法を併用して退院した. 心臓外来初診時には右心系拡大と体循環を超えるPHが示唆された. PDE5阻害薬が既に導入されていたが, 在宅酸素とともに肺障害・二次的にPHを増悪させる可能性を考慮し, 早期修復を目指すこととした. 既に投与されていた少量利尿薬を高用量・多剤併用に切り替え, 在宅酸素は酸素飽和度90%以上を維持する管理とした. 体重増加は得られなかったが次第に右室圧低下を示唆する所見を得たため,心臓カテーテル検査を施行した. 右室駆出率は低下なく,Qp/Qs 1.5前後, RVp/LVp 0.5-0.6, 肺血管抵抗は6-8単位であった.酸素・NOへの反応は軽微であったが, 容量負荷後でRVp/LVpは0.8-1.1に上昇し, 顕著な拡張末期圧上昇を示した. 考察:高度PHを伴うASDにおいて容量負荷軽減により右室圧が低下し,容量負荷増強により急激に拡張末期圧が上昇しPHが増悪する所見を認めた. 小児期のPHを伴うASDでは右心系拡大に伴う心室間連関を介した拡張障害がPHの一因を形成している可能性があり, 治療適応から取り残さないために容量負荷に対する反応評価が極めて重要である.