The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Theme)

スポーツ文化研究部会 » 【課題A】グローバル課題の解決に向けてスポーツから何が提案できるか

スポーツ文化研究部会【課題A】口頭発表①

Tue. Sep 7, 2021 1:30 PM - 2:45 PM Room 9 (Zoom)

Chair: Masayuki Enomoto (Shiga University)

1:45 PM - 2:05 PM

[スポーツ文化-A-02] 蹴鞠再現研究

近代工法を用いたエゾシカ蹴鞠使用球の製作

*Koya Ara1 (1. Asahikawa KOSEN)

球技において使用される球(ボール)にはそれぞれ特徴が現れている。これは日本の伝統的な文化である蹴鞠についても共通している。蹴鞠で使用されている鞠は鹿革(夏の雌鹿)を用いており、2枚の面を括り合わせることによって球体を描いている。中は空洞で紙風船のような特徴を持ち合わせている。鞠を製作する鞠師の減少と鹿革の入手が困難であることから、鞠の希少価値は高い。他の球技と比較すると蹴鞠は「球(ボール)」に触れられる機会が乏しく、これは蹴鞠文化継承・普及という観点から解決すべき課題である。

そこで本研究の目的は蹴鞠文化の継承・普及に寄与するために蹴鞠使用球の製作に新たな手法を提案していくこと。鹿革使用と鞠師不足による希少価値の高さを解決することを目的とする。

蹴鞠の作業工程は「けまり鞠遊会」発足者であり鞠師でもある池田遊達氏の鞠製作を調査した。調査した作業工程の中で「目打ち」と「括り紐作成」をレーザー加工機やシャーリングマシーンを使用した近代工法にて実施した。革は入手ルートが確率されているエゾシカ革を選定した。

製作したエゾシカ鞠は、紙風船のような特徴的な鞠の構造を再現することができ、耐久性も高く蹴鞠をプレーする上での機能を十分に果たすことができた。さらに製作コストにおいては十分な削減が可能となり、作業工程においても製作時間の短縮が可能となった。しかし、エゾシカ革は鹿革と比較するとやや柔らかく、「穀つめ」において伸びやすい傾向にあった。これにより括り紐が荷重に耐えきれず亀裂が入る箇所が確認されたことは課題であったため、括り紐の強度を高めるためにさらに硬化剤を使用するか別の素材を検討する。

鞠師による「伝統工法を用いた歴史的な鞠製作」を参考した「近代工法を用いたエゾシカ蹴鞠使用球製作」は、従来抱えていた課題の解決に貢献できることが明らかとなった。