日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題A】グローバル課題の解決に向けてスポーツから何が提案できるか

スポーツ文化研究部会【課題A】口頭発表①

2021年9月7日(火) 13:30 〜 14:45 会場9 (Zoom)

座長:榎本 雅之(滋賀大学)

14:05 〜 14:25

[スポーツ文化-A-03] オリンピックの開催が外国イメージに与える影響のメカニズムに関する一考察

ロンドンオリンピック開催時におけるロシアと北朝鮮への態度に着目した実証的検証

*下窪 拓也1 (1. 新潟医療福祉大学)

 本研究の目的は、メガスポーツイベントの開催が、外国イメージに与える影響を明らかにすることである。代表的なメガスポーツイベントであるオリンピックは、国際的な友好関係を深めることを目的の一つに謳っており、「平和の祭典」という言葉がしばしば用いられる。一方で、スポーツを通じて国同士の優劣を競い合うことから「疑似戦争」という言葉が用いられることもある。このように、メガスポーツイベントの開催は、外国への認識に影響を及ぼすものであることが、議論されてきた。

 先行研究では、オリンピックの開催は、外国のイメージを向上させる可能性がある一方で、日本との対立関係が顕在化している国およびその国民のイメージは、大会を通じて否定的な変化をする傾向にあることが示唆されている。しかし、大会の開催が外国イメージを否定的な方向に変化させるメカニズムは未だ明らかにされていない。メガスポーツイベントの開催が、外国への態度を悪化させるメカニズムを解明することは、メガスポーツイベントが持つ社会的なリスクの解決にも貢献する。本研究は、2012年ロンドンで開催された夏季オリンピックの前後で実施された社会調査の二次データを基に、大会の開催がロシアおよび北朝鮮のイメージに与えた影響を分析する。

 分析の結果、以下のことが明かになった。まず大会終了後ロシアのイメージの悪化が確認された。そして、大会がロシアのイメージに与える影響は、日本とロシアとの関係性に関する認識を媒介に生じていることが明かになった。このことから、外国イメージの悪化は、大会を通じた敵対的な国際関係の顕在化が原因であると考えられる。一方で、北朝鮮のイメージは大会を通じた変化は確認されなかった。ただし、北朝鮮のイメージは極端に悪く、床効果の可能性が考えられる。以上、本研究結果は大会の開催が外国イメージに与えるメカニズムの解明に貢献するものである。