日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー14] 小学校5、6年生の体育授業における劣等コンプレックスと運動有能感の因果関係

〇當山 貴弘1、中須賀 巧2、八尋 風太1、杉山 佳生3 (1.九州大学大学院、2.兵庫教育大学、3.九州大学)

小学校体育科では、運動に意欲的でない子に対する配慮が求められており、教師は体育授業で実施される運動課題に対して回避的に取り組む児童の実態を把握し、その者に向けた効果的な指導を施す必要がある。本研究では、体育授業における回避的態度とされる劣等コンプレックスに着目し、運動に対する自信とされる運動有能感との因果関係と、それぞれの発達的特徴について明らかにすることを目的とした。小学校5、6年生160名を対象に、体育授業における劣等コンプレックス尺度(佐々木・須甲、2016)と運動有能感尺度(岡沢ほか、1996)を用いて、5月、7月、10月と縦断的に調査を実施した。3回の調査間でデータに欠損のなかった155名(男子64名、女子91名、有効回答率96.9%)を最終分析に用いた。分析モデルについては、劣等コンプレックスと運動有能感の因果関係と、それぞれの経時変化を確認するために、交差遅れ効果モデルと成長曲線モデルを採用した。交差遅れ効果モデルにおける適合度指標は、良好な値を示した。パス係数において、1時点目の劣等コンプレックスは、短期的に運動有能感に負の影響を及ぼすことが認められた。また、1時点目の運動有能感は、短期・長期的に劣等コンプレックスに負の影響を及ぼすことが示された。なお、短期的な因果関係については、運動有能感から劣等コンプレックスに及ぼす影響力が強いことが示唆された。続いて、成長曲線モデルにおいて、劣等コンプレックスは負の傾きがあり、運動有能感は傾きに有意性が認められなかった。このことから、1時点目から3時点目にかけて劣等コンプレックスは下降し、運動有能感は統計的に変動しないことが示唆された。これらのことから、小学校高学年における運動に意欲的でない児童に留意した体育授業においては、初期段階において運動有能感を高める指導を実施することが効果的であると考えられる。