日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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バイオメカニクス ポスター発表

[05 バーポー03] 高校生女子長距離走選手の力発揮時の下腿三頭筋における粘弾性と競技力との関係

〇小西 康基1、上野 拓海1、齋藤 壮馬1、秋原 悠2、竹下 大介3、小田 俊明1 (1.兵庫教育大学大学院、2.大阪成蹊大学教育学部、3.東京大学)

筋腱が有する力学的特性(粘弾性)は、陸上競技中長距離における競技力に大きな影響を及ぼす。しかし、先行研究で用いられた負荷の多くは実際の走行時の発揮筋力よりも低いものが多かった。本研究では、下腿三頭筋の複数強度での力発揮時における筋腱の粘弾性と競技力の関係を検討することを目的とした。対象者は高校生女子長距離選手10名(身長155.9±5.5cm、体重41.9±2.9kg、年齢16.8±0.7歳)であった。競技力は2020年度3000mの最高記録(平均10分06秒74±32秒23)をIAAFスコアに換算した(平均897.90±96.85点)。粘弾性の測定はFukashiro et al.(2001)と同様の方法を用い、下腿三頭筋の筋腱複合体システムの減衰振動を誘発した。微分方程式の一般解に実験データをフィッティングし、粘性及び弾性を算出した。粘弾性は100Nから600Nまでの100N毎の値を算出した。結果、100N毎の弾性係数の平均値は、27.82±4.52、54.07±9.36、78.98±14.65、102.74±20.40、131.88±26.60、147.34±33.2(kN/m)となり、全強度での弾性係数と競技力の間に、高い正の相関を示した(それぞれr=0.69、0.70、0.69、0.68、0.67、および0.66)。計測した範囲では100N毎の弾性係数の平均値の増加量は、非線形ではなく直線的であった。粘性係数(e.g. 600N時77.8×10³±18.8×10³(N/s))と競技力との間に統計学的に有意な相関はみられなかった。以上のことから筋腱の弾性の大きい(硬い)選手ほど競技力が高いことを示している。しかしながら、発揮筋力によって相関係数に大きな差はみられなかったことから、筋腱の弾性の被験者間での順序性は発揮筋力に影響を受けないことが示唆された。