[05 バーポー16] フライングディスクのフォアハンド投擲動作おけるディスク姿勢の変化を抑制する運動学的要因
熟練者と未熟練者の体幹部および投擲腕各関節運動に着目して
フライングディスク(ディスク)を投げ出す際、その姿勢の変化を抑えることは目標へ正確にディスクを投げるために重要な技術である。本研究の目的は、熟練者と未熟練者のディスクのフォアハンドショートスロー動作に着目し、ディスク姿勢の角速度を生成する体幹部と投擲腕の各関節運動の運動学的特徴を明らかにすることである。両群に距離8mのフォアハンドスローを室内で行わせ、その際の体幹部、投擲腕、ディスクの3次元座標をモーションキャプチャーシステムによって取得した。体幹と投擲腕各関節における関節角速度を算出し、それらを利用してスピン速度を除くディスクの姿勢(前/後方傾斜、右/左傾斜)の角速度を求めた。リリース時の未熟練者群のディスクは前方傾斜角度、かつ高い前方および左傾斜速度で熟練者群に比べて有意に大きい値を示した。リリース直前の体幹部と肩、肘、上橈尺関節、手首の各関節角速度の大きさに両群間で有意な差は確認されなかった。各関節角速度より求めた各ディスク姿勢の合計角速度において、両群共にリリース直前に生じていたディスクの高い前方および左傾斜速度は熟練者群ではリリースに向かって急速に減少していた。一方、未熟練者群ではそれぞれ高い角速度のままリリースに達していた。各関節角速度より求めた各ディスク姿勢の角速度の大きさと投擲腕の姿勢から、未熟練者群の肩内旋角速度ベクトルは左傾斜速度ベクトル方向を、また手首掌屈角速度ベクトルは後方および左傾斜速度ベクトルの中間を向いていると推測された。従って、未熟練者群はリリース直前にディスクを後方傾斜角度にすることでスピン速度ベクトルに対する肩内旋角速度ベクトルの角度を減少させ、また上橈尺関節の回外角度を小さくし前方傾斜速度ベクトルに対する手首掌屈角速度ベクトルの角度を増加させることでリリース時のディスク姿勢の角速度の減少につながることが熟練者群との比較から示唆された。