15:00 〜 15:15
[学校保健体育-C-21] 体育授業における児童の失敗に対する価値観の構造について
体育授業の失敗観尺度の作成
「失敗」は誰もが避けたいものであり、できることなら見られたくないものである。しかしながら、体育の授業においては、運動の出来栄えが他者に公開されるという特徴があり、他者比較や他者軽視がなされやすい環境であることから、失敗が動機付けの低下や無力感の引き金になるなどネガティブな面が明らかにされてきた。一方で、失敗以前には気付かなかった潜在的問題点を洞察させることで、学習を促進するという失敗に関してポジティブな側面があることも明らかにされてきた。平成29年改訂の小学校学習指導要領では、体育科において「学びに向かう力・人間性等」の中に「運動に意欲的でない児童への配慮の例」が示されている。そこで本研究では、児童の主体的に運動に取り組むことができるよう失敗に対する価値観の構造について明らかにすることを目的とした。調査は、202X年4月から5月に、小学校6年生計128名を対象に質問紙による調査を行った。なお、質問紙の項目は予備調査により小学校5年生の計272名から得られた203個の記述から42項目を選定したものを用いた。質問紙調査から得られたデータを最尤法、プロマックス回転により探索的因子分析を行った。その結果、「自己否定(α=.921)」「他者からの評価(α =.858)」「学習可能性(α=.793)」「受容(α=.703)」の4因子30項目が抽出された。ネガティブな側面である「自己否定」「他者からの評価」とポジティブな側面である「学習可能性」が見出された。さらに、両方の側面を関係づけるものとしての価値観「受容」があることが示唆された。