日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】口頭発表②

2021年9月8日(水) 09:00 〜 10:20 会場8 (Zoom)

座長:加藤 えみか(京都産業大学)

09:40 〜 10:00

[スポーツ文化-B-07] 体育における民主主義思想に関する研究

丹下保夫の教育思想に着目して

*佐藤 亮平1、近藤 雄一郎2 (1. 宮城教育大学、2. 福井大学)

 近年、民主主義の危機が深刻化している。その民主主義の危機について宇野(2020)は4つの観点を示している。その中でも特に「第四次産業革命とも呼ばれる技術革新」と「コロナ危機」が教育界に与える影響を見逃すことはできない。宇野(2020)によれば「AIやIOT(モノのインターネット)、さらにロボットやナノテクノロジー、さらにバイオテクノロジーなどの発展が、第四次産業革命をもたらしている」と、産業構造に変化が起きているとする。こうした産業構造の変化は学習指導要領に影響を与えるとされる(友添、2010)。また「コロナ危機」は、教育界にオンライン授業を提案し、それがGIGAスクール構想により実現可能な状況を創り出した。このように第四次産業革命とコロナ危機が教育界に新たな授業方法を求める一方で、教科として、何を・どのように変革させるのかを慎重に議論する必要がある。つまり、体育における民主主義思想の変容について見つめ直す必要がある。
 そこで本研究の目的は、戦後の体育を創造してきた丹下保夫に着目し、彼の民主主義思想と現在の体育の指導にどのような関係があるかについて考察する。
 研究方法は丹下の教育思想全体を通史として描いている先行研究を補助線に、彼の民主主義思想がどのように変容してきたかについて明らかにする。そして、この思想が指導法においてどういった形で実現されているかについて考察する。
 丹下の遺稿集に民主主義に関わる記述がみられることから、彼の教育思想の中核にその思想があったと考えられた。また、丹下はスポーツを分析することの重要性を述べながらも、学習者間の合意形成の下でルールを変更することを承認するなど、スポーツと学習者の中にも民主的関係を作り出そうとしていたことから、ルール作りを生徒ともに行う実践等には民主的関係を創り出す営みとしての側面を見出すことができると考えられた。