The 71st Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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スポーツ文化研究部会 » 【課題C】多様なスポーツ文化の保存・流通・促進をいかに刷新していくか

スポーツ文化研究部会【課題C】口頭発表②

Wed. Sep 8, 2021 1:45 PM - 3:15 PM Room 8 (Zoom)

Chair: Hiroshi Kubota (Tokyo Gakugei University)

2:20 PM - 2:40 PM

[スポーツ文化-C-09] 「別れの文化」としての甲子園

*Sho Shiraishi1, yuichi Hara2 (1. Kantaiheiyou University, 2. Okayama University)

大村(2004)は、スポーツ競技が勝利者を讃える「煽る文化」であると同時に、他方では「敗北者の高貴」をも創り出すことから深いメタ・レベルでは、己れの”分”を知るという「鎮めの文化」でもあると指摘する。本研究では、このようなスポーツが「鎮めの文化」装置でもあるという視点を取りながら、甲子園にまつわる様々な儀礼を「鎮め」という側面から改めて捉え直し考察をすることを目的とする。
ところで、COVID-19によって2020年に予定されていた夏の甲子園大会は中止を余儀なくされた。甲子園を目指してきた高校生にとっては、目標を失うという事態に陥ったわけであるが、なんとか彼らに野球をする場を用意するために、各地で無観客を前提とした代替大会という措置がとられた。このことによって、甲子園を目指す大会(以下、地方予選も含め甲子園大会)において通常経験するはずであった様々な出来事がなくなったことにより、高校生は改めて従来の当たり前にあったことを相対化する契機となった。そこで、高校生5名、指導者1名へのインタビューを実施し、印象的な儀礼についての認識を収集したのち、これらの儀礼がいかに「鎮めの文化」装置として機能しているのかについて分析した。結論からすると、甲子園大会に散りばめられた一つ一つ儀礼は、段階的に高校球児から一般の高校生へと鎮めていくような有機的な繋がりを有しており、これは我が国における別れの儀礼に非常に類似することが明らかとなった。これまで、「野球人生に幕をおろす」というような言葉がよく用いられてきたが、甲子園大会とは言わば球児という役割から社会的に死別する儀礼としての機能も、一方では兼ね備えていたのである。過酷な状況下での大会運営や、高校で野球人生に一区切りをつけ、引退する球児が85.6%にのぼる(S-PARK,2019)という現象も上記のような側面から裏付けられる。