日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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保健/口頭発表②

2021年9月9日(木) 11:15 〜 11:51 会場11 (Zoom)

座長:岩井 浩一(茨城県立医療大学)

11:15 〜 11:27

[10 保-口-04] 米国における性教育プログラム(Personal Responsibility Education Program)の特徴と可能性

我が国での学校の教育活動全体を通じた性教育の充実に向けた示唆

*久保 元芳1、町田 悠希2、山口 智也3、田中 睦子4 (1. 宇都宮大学、2. 上越教育大学大学院、3. 宇都宮大学大学院、4. 栃木県立宇都宮中央女子高等学校)

我が国の青少年の性に関する健康課題は多様化・複雑化しており、学校での性教育の一層の充実が求められている。本報では、近年の米国で成果を挙げているPersonal Responsibility Education Program (PREP)に着目し、米国保健社会福祉省のPREPのガイドラインなどの資料から、基本方針、教育内容、指導方法等について分析し、我が国の性教育への適用性を検討した。その際、道徳教育の視点からPREPの概要等を整理した帖佐(2017)の先行報告も参考にした。

PREPの基本方針は「エビデンスを重視した教育」「ハイリスク集団にも焦点を当てる」「禁欲と避妊の両方を含む」「成人期への移行に関する題材の設定」である。成人期への移行に関する題材は、健全な人間関係、青年期の発達、金融リテラシー、親子間コミュニケーション、教育及びキャリア上の成功、健全なライフスキル、の中から3つを選択することとなっている。PREPは第6~9学年で38時間程度実施され、指導方法としてはDVD視聴やオンラインでの対話型知識クイズ、ブレインストーミング、ロールプレイング等が用いられている。また、保護者や青少年育成に携わる地域の大人と連携した取組も導入されている。

PREPは青少年の性の健康課題に関して、発育発達、人間関係、金融リテラシー、キャリア形成などの多様な題材を通して学ぶものであった。こうした取組は、我が国の中等教育において、保健体育科を中核としながら道徳科、家庭科、社会科、特別活動、総合的な学習(探究)の時間などでの学びも関連付けた教科等横断的な性教育の充実の方向性の一つとして参考になると考えられた。また、多様な青少年を対象とし、保護者や地域の関係者と連携しながら指導を工夫している点などは、我が国の性教育における「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた方策を検討する上でも有意義であると思われた。