日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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アダプテッド・スポーツ科学/口頭発表①

2021年9月9日(木) 10:15 〜 11:20 会場14 (Zoom)

座長:曽根 裕二(大阪体育大学)、松原 豊(筑波大学)

10:30 〜 10:45

[13 ア-口-02] 重度・重複障害児を対象としたアダプテッド・スポーツ用具開発に係る有効性の検討

ウォータースポーツ「SUP(Stand Up Paddleboard)」の用具開発を通じて

*加地 信幸1、相川 貴裕2、河野 喬1 (1. 広島文化学園大学、2. 朝日医療専門学校広島校)

本研究は、最重度の身体・知的障害を有し、中には吸引、経管栄養等の医療的ケアを要する重度・重複障害児が参加可能となるよう開発した、アダプテッド・スポーツ用具に係る有効性を検証した。近年、障害者もパラスポーツとして水上や水中で行うウォータースポーツにトライするようになり、水泳、カヌー、ボートはパラリンピック種目として採用されている。しかし、ウォータースポーツの種目数は陸上で行うスポーツの種目数と比較すると少ない。そこで本研究では、サーフィンやヨットのように波・風の有無等の気象条件に左右されにくく、水上でサーフボードに立った状態でパドルを漕ぎながら進むことができ、パラスポーツでも取り組みのないSUPに着目し用具開発を試みた。ポイントは①後方のサーフボードに自作したサイドフロートを取り付け転覆防止を図った点、②2台のサーフボードをコードで連結し、前方は支援者の牽引用、後方は子供が車椅子から降りて介助者から支援を受けたあぐら座位姿勢で乗る滑走用とした点、③子供の座面にカヤックシートとジェルクッションを取り付け座位の安定性および快適性の向上を図った点である。試乗の結果①サイドフロートを取り付けた工夫によりサーフボードが転覆することなく安定した滑走が可能、②子供がサーフボードから転落する事なくあぐら座位姿勢で乗ることが可能、③前方から後方のサーフボードを牽引することにより子供の水上滑走を可能とすることができた。活動中の子供からは、自主的に手を伸ばして川の水に触れる動きや体を起こして喜ぶ様子等が確認された。保護者への聞き取りでは「陸上とは異なる身体の使い方をして良い運動になる」「水上ならではの揺れを感じながら自分でバランスをとっていた」「帰宅後は普段より飲食量が増し睡眠が深かった」等が確認された。以上のことから用具開発は成功し、子供の主体的な運動面、健康面等に有効であることが示唆された。