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[03 心-口-08] アルティメットにおけるハンドラーとオフェンスの意思決定プロセス
身体の教育における学習内容は、指導を通して学ばせたい技能や判断等である。学習内容を見通しながら、学習者が取り組む直接的な課題に再構成していくプロセスが教材開発であり、教材開発は指導者の専門性が発揮される仕事である(岩田、2010)。従って、素材としてのスポーツ活動を通して学習者がどのような技能や判断をしているのかを理解することは、見通しを持った教材開発に役立つ。しかしながら、スポーツ活動中に瞬間的にプレイヤーがどこを見てどのように判断したのかをリアルタイムで捉えて言語化することは難しいことから、プレー中の技能や判断は、経験的には使われている知識であるにもかかわらず、言葉として説明しきれていない暗黙知の次元に留まっている。こうした暗黙的な実践知を捉える方法として用いられているオンゴーイング法(生田、1998)には、その場で言語化に至らなかった状況認識の過程を捉えきれないという欠点があり、視覚VTRによる再現認知法(西原、2008)は、どこを見ているのかはカメラのフレームに写っている映像に依拠するため、実際にどこを見て認識していったのかを抽出することはできない。そこで本研究では、モバイル式のアイトラッキング装置(M-ET)を用い、プレイヤー自身がスポーツ活動中に実際にどこを見ているのかを明らかにした上で再現認知法を併用し、プレイヤーがプレー中に刻々と変化する状況をどのように判断しているのか、その意思決定のプロセスを明らかにすることを目的とする。発表では、その場での判断が求められる陣取りゴール型のスポーツ種目であるアルティメットを対象スポーツとして、熟達者(アルティメット日本代表)と未熟達者(2年未満)のプレー中の視線の特徴と判断プロセスの分析結果を示し、瞬時の判断プロセスを捉える方法についての議論を深めていきたい。