日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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バイオメカニクス/口頭発表③

2021年9月9日(木) 14:30 〜 15:13 会場6 (Zoom)

座長:阿江 数通(茨城県立医療大学)

15:00 〜 15:13

[05 バ-口-09] バレエの片脚支持回転動作における上体各関節角度の調節が上肢角運動量生成メカニズムに及ぼす影響

運動依存項による角運動量生成に着目して

*井村 祥子1、飯野 要一2、小池 関也3 (1. 東京都立大学大学院、2. 東京大学大学院、3. 筑波大学体育系)

バレエの鉛直軸周りの回転動作では、上肢を水平回旋して得た角運動量を利用する。上肢最大角運動量の増加には運動依存項(MDT)が最も貢献する。MDTは多体系の運動によって生じる遠心力やコリオリ力からなる非線形項であり、セグメント角度や角速度の影響を受ける。発揮トルクの増大は角度や角速度を変化させ、結果的にMDTに影響する。しかしトルク発揮の増大は努力感を伴い、バレエの審美性を損ねる可能性がある。よって本研究は、上体各関節の初期角度や角度変化のタイミング調節が上肢角運動量のMDTに与える影響を検討することを目的とした。回転動作における上肢回旋時の上体各関節角度をオイラー角として求め、その2階微分を3次スプライン関数で表しこれを積分して上体の姿勢を求めた。このモデルを用いて逆動力学演算を行い算出した運動学および運動力学を基準データとした。さらにモデルの運動方程式を利用して上肢角運動量およびそのMDTを求めた。基準データから、両肩関節水平内外転・両肘関節屈伸および上胴仮想関節回旋の初期角度を±45度、また両肩関節水平内転・肘関節屈曲・体幹右回旋加速のタイミングを±0.05秒変化させた。基準データの当該関節トルクとのRMSが1Nm以下の場合について、上肢角運動量のMDTおよび当該関節トルクを基準データと比較した。上肢角運動量のMDTは、左上肢と比べ右上肢の初期角度の影響を受けなかった。左上肢の初期角度は5度以内の肩水平外転および肘伸展角度の変化では発揮トルクは増大せずMDTの貢献を高めた。また両肩関節水平内外転動作の切り替えおよび体幹の右回旋加速タイミングの影響は小さかった。左肘関節の屈曲タイミングの遅延は最大屈曲トルクを増大せずMDTの貢献を高めた。これらの結果は、左上肢の関節角度を調節し関節トルクを増大せず同上肢角運動量におけるMDTの貢献を高めるという先行研究の仮説を支持した。