The 72nd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

Presentation information

Oral (Theme)

スポーツ文化研究部会 » 【課題A】グローバル課題の解決に向けてスポーツから何が提案できるか

スポーツ文化研究部会【課題A】口頭発表①

Wed. Aug 31, 2022 11:00 AM - 11:47 AM 第10会場 (2号館4階45教室)

Chair: Fumie Yamazaki (Niigata University of Health and Welfare)

11:16 AM - 11:31 AM

[スポーツ文化-A-02] 第11回オリンピック冬季競技大会(1972/札幌)閉会後における恵庭岳滑降競技場跡地の復原に関する一考察(史)

行政文書および大会組織委員会議事録の検討を中心に

*Soya Ishizuka1 (1. Japan Sport Association)

1972年に札幌で開催された第11回オリンピック冬季競技大会(以下、札幌大会)では、スキー競技の滑降種目に特化した会場として恵庭岳滑降競技場が建設されたが、大会終了後には競技施設を撤去し、跡地に植林を施す復原工事が行われた。これはオリンピック・ムーブメントにおける環境保護対策の初事例とされている。先行研究では、復原工事に至るまでの経緯について明らかにされているが、競技場跡地の処理方策決定以降の競技場竣工に至る経緯については明らかにされていない。また、近隣都市や競技団体関係者が競技場の存置を要望していたことが明らかになっているが、それに対する大会組織委員会の対応については明らかにされていない。
 そこで本研究では、行政文書や大会組織委員会議事録の検討を行い、恵庭岳滑降競技場跡地の処理方策決定以降の競技場竣工に至る経緯や、競技場の存置要望に対する札幌大会組織委員会の対応について明らかにする。また、本研究結果に基づき、オリンピック・ムーブメントにおける環境保護や持続可能性のあり方について若干の考察を行う。
 検討の結果、主に以下の4点が明らかになった。1)工事施行によって削られた箇所は速やかに緑化するとともに、競技施設を札幌大会開催年内に撤去することが条件付けられていた。2)プレ大会として実施された「札幌国際冬季スポーツ大会」の運営実績や国際スキー連盟の指摘を踏まえ、札幌大会における競技会を安全に実施することを目的として土地形状を変更するための工事が行われていた。3) 近隣都市や競技団体関係者から恵庭岳滑降競技場の存置を求める意見が挙がったが、大会組織委員会は復原を条件として建設許可がなされていることや、国際社会から環境問題を無視あるいは軽視していると批判を受ける可能性があると考え、存置案を退けた。4) 大会終了後、恵庭岳滑降競技場跡地の一部が「支笏湖自然の村」として後利用されていた。