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[健康福祉-B-01] 段差跨ぎ動作時における保守的な衝突回避戦略と動作の多様性の関係(介)
高齢者が身体の持つ冗長性を十分に利用できず単調な動きの繰り返す特徴は、転倒の要因として注目されている。このような単調な動きは、段差跨ぎ場面に「必要以上に足を挙げて回避する保守的な回避戦略」にもみられる。保守的戦略は、確実な衝突回避に寄与するものの、どんな高さの障害物でも同じ動作パターンでの回避を誘導する。すなわち、高齢者は保守的な戦略の結果、動作の多様性が減少している可能性がある。本研究では、こうした動作の多様性をUncontrolled manifold(UCM)解析を用いて筋骨格系の協調性の観点から評価し、段差跨ぎ時における協調性の年齢変化ならびに跨ぎ脚による影響を検証した。さらに、保守的戦略と協調性の関連も検討した。対象者は26名の高齢者と21名の若齢者であり、高さ8cmの段差を歩行しながら跨いだ。先導脚、後続脚それぞれが障害物を跨ぐ瞬間においてUCM解析を実施した。UCM解析で得られるΔVzが高い場合、足尖挙上を一定に維持する関節協調パターンが多いことを示す。検証の結果、段差跨ぎ動作時の身体協調性は、年齢による著明な違いが見られなかったものの、跨ぎ脚間の制御の違いや足を高く上げる人ほど、協調性が低下することが明らかとなった。ΔVzに対する年齢(高齢者、若齢者)× 跨ぎ脚(先導脚、後続脚)の2要因分散分析では、交互作用及び年齢による主効果はみられなかった。一方で、跨ぎ脚での主効果は有意であり、年齢にかかわらず、先導脚の方が有意に多様な関節協調パターンを利用していることがわかった。さらに、クリアランスとΔVzの相関分析では有意な負の相関がみられ、年齢にかかわらず、クリアランスが大きい人ほど、動作の多様性が低下していることがわかった。したがって、保守的な回避戦略による歩行習慣は、単調な動きへと誘導する可能性があり、必ずしも有益な回避戦略とは言えないことが示唆された。