[健康福祉-SB-2] 認知症予防を目指した多因子介入の現状と課題
<演者略歴>
1995年東京⼤学医学部医学科卒業、1999年日本神経学会専門医、2004 年博士 (医学) 取得。2005 年マサチューセッツ総合病院に留学。帰国後、東⼤神経内科特任助教を経て 2010 年より神⼾⼤学神経内科講師、2012年同神経内科准教授、2017年同保健学研究科教授。2021年4月より認知症予防推進センター長を兼務。
1995年東京⼤学医学部医学科卒業、1999年日本神経学会専門医、2004 年博士 (医学) 取得。2005 年マサチューセッツ総合病院に留学。帰国後、東⼤神経内科特任助教を経て 2010 年より神⼾⼤学神経内科講師、2012年同神経内科准教授、2017年同保健学研究科教授。2021年4月より認知症予防推進センター長を兼務。
認知症高齢者数が600万人を超え、2025年には高齢者の約5人に一人が認知症になると見込まれておりこの対策は喫緊の課題である。認知症の主たる原因疾患であるアルツハイマー病の特徴的な病理構造物である老人斑を標的とした根本治療薬開発が進行中で、そのうちの一つが2021年6月に米国で条件付きながら認可された。しかしながらその効果は症状の進行を2割前後遅らせる程度であり、失われた認知機能を元に戻すことはできず、人々の期待に十分応えたとは言えない。未発症の段階での薬物投与が検討されているが副作用の可能性もあり、非薬物介入による予防への関心が高まっている。実際、フィンランドの高齢者を対象とした多因子介入ランダム化比較試験(FINGER研究)により食事、運動、脳トレ、血管因子モニターなどの総合的な介入により認知機能の悪化を予防しうることが示された。介入因子は人種や文化によりその内容も異なることから、我が国でもJ-MINT研究として実証研究が進行中である。こうした介入研究の成果を、老人斑の蓄積予防や減少につながる機序とともに紹介するとともに、こうした介入の社会実装を目指す際の課題や解決法についても議論したい。