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[スポーツ文化-C-03] 大学生アスリートを対象とするアンチ・ドーピング教育に向けた倫理・道徳教育とその限界(哲)
大学生アスリートを対象とするアンチ・ドーピング教育の課題に関して、昨年度筆者は、次のことを示した。すなわち、うっかりドーピングに象徴されるように、日本では、ドーピングに対する知識の欠如を補うことがアンチ・ドーピング教育の優先課題に据えられており、ドーピングがスポーツ文化を毀損する可能性に対する認識や倫理・道徳的な教育が不足していることである。しかしながら、海外での国家ぐるみのドーピング問題に鑑みると、こうしたアスリートを対象とした教育を推進するにはある種の限界があることが想像できる。そこで、本発表では、アンチ・ドーピングに対する倫理教育の限界と可能性を見定めることとする。この目的に迫るために、①倫理的な教育の可能性を探るべく、ドーピングの誘発要因やドーピングをしないアスリートに見られるアンチ・ドーピングの理由を見定める、②それら得られた知見がアンチ・ドーピングを進める諸活動に対してどういった部分をカバーしうるかを検討する、の2つの課題を設定する。これらの検討から浮かび上がるのは、アスリート自身の権利の保持と同時に他者の権利を保障するという2つの側面を満たすための教育の推進となろう。