日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】口頭発表③

2022年9月1日(木) 09:00 〜 09:47 第11会場 (2号館4階46教室)

座長:山口 理恵子(城西大学)

09:32 〜 09:47

[スポーツ文化-B-09] パラリンピックと非パラリンピックアスリートの(ディス)エンパワメント(ア)

ソーシャルフットボール選手に着目して

*秋本 成晴1 (1. 筑波大学)

「インクルーシブ社会の創造」を掲げるパラリンピックであるが、パラリンピックは、競技大会であるという特性上、クオリファイや参加資格を有さない多くの障害者を排除することで成り立っており、障害者にとって一見、非常に排他性の高い大会である。故に、そうした障害者をエンパワメントし、積極的に社会に包摂していくことを考えていく上で、大会という枠組みを超えた、パラリンピックムーブメントに期待される役割が大きいのである。しかし、十分な競技力を有しながらも、参加資格を有さないがために大会に出場できない障害者アスリート(=非パラリンピックアスリート)が、同ムーブメントからどのようにエンパワメントされているのかは、ほとんど検討されてきていない。
 そこで、本研究では、非パラリンピックアスリートがパラリンピックからどのようにエンパワメント(を阻害)されているのか、その実態を明らかにすることを目的とした。
 上記目的を達成するため、本研究では、精神障害を有する人に親しまれている、ソーシャルフットボールのトップ選手を対象に、インタビュー調査を実施し、得られた逐語録データを、テーマティック・アナリシス法を用いて分析した。
 その結果、努力を美徳とするパラリンピックの価値観や、障害者の代表としてパラリンピアンが表象されること、パラリンピアンとの様々な格差等が、彼らのエンパワメントを阻害していることが明らかになった。また、パラリンピックで取り上げられることの多い肢体不自由や全盲といった視覚的に認知し易い障害の理解推進は、精神障害(者スポーツ)の理解に繋がっていかないという声があった。なぜなら、精神障害(者スポーツ)は、健常者にとって体験することが難しく、観戦からだけでは、彼らに必要な配慮やアダプテーション、卓越性を理解することが困難だからである。