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[競技スポーツ-C-07] 平均台の技術開発に関する発生運動学的研究(方)
跳躍技群の始原論的構造分析
トレーニングの場面では開発された技の価値を検証し、確かめる作業を行う必要がある。それをおこたってしまった場合、歴史的な淘汰に堪えられずに消えてしまう技を産んでしまう可能性を否定できないからである。体操競技においてはこれまで多くの技が開発された一方で、採点規則から削除された技も少なくない。例えば2022年から施行されている女子採点規則において、平均台の〈片膝水平立ちターン〉が削除されている。このようにルールの変更に伴って練習していた技が採点規則より削除された場合にはこれまでの苦労が報われないばかりか、演技構成を大きく見直す必要に迫られてしまい、場合によっては選手生命を左右することもありえる。そのためには始原論的構造分析を欠かすことはできないであろう。発生運動学における始原論的構造分析とは、通時的・共時的な視点から動感形態に匿名的に働く価値志向性を明らかにするためにフーコーのアルケオロジーの視点を取り入れた分析方法である。これにより、今後認められると考えられる新技開発の方向性を定めることができるとともに、トレーニングすべき技の取捨選択をすることができる。さらに、跳躍技群の体系的なトレーニング計画の作成に寄与できるのである。本研究ではこれまでの技術開発の動向、採点規則における技の追加・削除の情報を整理することで平均台の跳躍技群における匿名的な価値志向性を明らかにすることを目的とする。他種目である女子ゆか運動においては、「客観性」と「延長性」という2つの志向性が跳躍技群の固有原理として示されている。平均台でも同様に角度等を用いて客観的に評価できる形態の跳躍、つまり数値を用いて評価可能な技が生き残り、新技として発表された場合には認められる可能性が示唆された。