The 72nd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Subdiscipline)

専門領域別 » 体育社会学

体育社会学/口頭発表③

Fri. Sep 2, 2022 2:35 PM - 3:52 PM 第7会場 (2号館1階12教室)

Chair: Shinta Sasao (Tokyo Women's College of Physical Education)

3:27 PM - 3:52 PM

[02社-口-08] 運動格差の再検討

運動非実施理由と社会経済的地位の関連から

*Takuya Shimokubo1 (1. Niigata University of Health and Welfare)

本研究の目的は、運動習慣の社会経済的格差の実態を解明することである。これまで、運動を実施するための資源が不平等に存在しているため社会経済的地位に応じた運動習慣の格差が生じるとする理論的想定を基に、検証が行われてきた。従来の研究では、必ずしも収入や学歴と運動習慣の関連は大きくないため、社会経済的地位は運動習慣の重要な規定要因ではない可能性が示されている。 しかし、単に社会経済的地位と運動習慣の間に線形な関連が存在しないことは、資源の不足によって運動の実施が阻害されている人が存在しないことを意味するものではない。たとえば、低所得層が経済的資源の不足によって運動の実施が阻害されている一方で、高所得層が異なる理由(たとえば、運動非実施理由として時間的余裕のなさや運動の優先度の低さを議論する研究もある)で運動の実施から疎外されている場合、経済状況と運動習慣の関連を検証しただけでは実態の把握には不十分である。そこで本研究では、運動非実施理由と社会経済的地位との関連の分析を行った。分析では探索的因子分析を使用して運動非実施理由の要因を算出し、それらの要因と世帯年収および学歴の関連を、最小二乗法回帰分析を用いて検証した。因子分析の結果から、運動の非実施理由として、運動の優先度の低さ、身体的理由、経済的理由の3つが抽出された。次に回帰分析の結果から、男性では、世帯年収が運動の優先度の低さに正の、経済的理由に負の統計的に有意な関連を示した。女性では、学歴が運動の優先度の低さと正の、世帯年収が経済的理由と負の関連を示した。 以上の結果から、社会経済的地位と運動習慣の関連は一次元的ではなく、複数の次元が関与していることが明らかになった。また、低所得層は経済的理由から運動の実施が阻害されていることも確認された。本研究では最後に、研究の限界と今後の方針について議論する。