[09方-ポ-09] クリーン・ハイプルのトレーニングが野球のバットスイング速度に及ぼす影響
先行研究では、野球のバットスイング速度をパフォーマンスの指標とした、キネティクスに関する研究や、動作にかかわるキネマティクスに関する研究が数多く存在する。また、その動作や力発揮の特徴から、パフォーマンスの向上を目的とした様々なレジスタンストレーニングが推奨されている。一方で、実際のトレーニング介入がスイング速度に及ぼす影響について検討したものは少ない。そこで本研究では、打撃動作において重要とされている股関節の伸展に寄与する筋群を鍛えることが可能なクリーン・ハイプル(Clean High Pull、以下CHP)のトレーニングがスイング速度に及ぼす影響について検討した。 大学生野球選手36名を対象に、1週間に2回の頻度で12週間のトレーニングを実施した。トレーニングの負荷設定は最大パワーにおける負荷重量で5回を3セットとした。スイング速度の計測は、バットスイング解析装置(ミズノ社製)を用いて測定した。最大パワー(Peak Pawer、以下PP)の計測についてはCHPによる3つの異なる負荷における最大努力での挙上速度をリニアポジショントランスデューサー(GymAware)を用いて測定し、パワーを算出した。さらに、負荷とパワーの関係を二次回帰することでPPを推定し、CHPの最大パワーの体重比(PP/BW)を算出した。測定は、トレーニング介入前(Pre)、1か月後(4wks)、2か月後(8wks)、3か月後(12wks)の計4回とした。 その結果、Preから12wksの期間においてスイング速度、PP及びPP/BWの有意な増加が確認された。それぞれの増加率については、スイング速度において7.6±4.4%、PPにおいて19.7±11.9%、PP/BWにおいて19.2±12.7%の増大が確認された。また、スイング速度とPPの増加率の間には有意な正の相関係数が認められた。 以上の結果から、CHPのトレーニングによる最大パワーの向上が、スイング速度に影響を及ぼす可能性が示唆された。