The 72nd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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体育方法(偶数演題) ポスター発表

Fri. Sep 2, 2022 1:00 PM - 2:00 PM 第一体育館バスケ1 (第一体育館バスケ)

[09方-ポ-10] 直立位と倒立位の空間定位に関する発生運動学的一考察

体操競技の段違い平行棒の場合

*Daiki Morii1 (1. Japan Women's College of Physical Education)

日常動作における直立位では頭の方が上で目の前の方が前(お腹の方が前)となるが、こうした前後・左右・上下という方位性は普段、意識にさえ上らない当たり前の感覚であると言える。しかし、目の方が下になって進む水泳や、目まぐるしく敵味方の位置関係や移動方向に変化が起きるボールゲームなど体育・スポーツ場面においては空間定位に混乱が生じる例は少なくない。さらに、このような方位づけ現象の問題は競技スポーツ場面においては勝敗を決する重要な意味をもつ。
  体操競技では倒立位のように逆さまを経過する動きが大半を占め、倒立の技術を基本に据えた単純な技をベースにして、より複雑な高難度技へと発展していく。倒立位では足の方が上で頭の方が下となり、「前に進め」と言われれば背中の方に向かって歩くのである。こうした出来事は競技年数を重ねた体操競技選手には当たり前であり、改めて確認するまでもないと思われるが、果たして本当にそう言えるのだろうか。
 本研究で取り扱う体操競技の女子段違い平行棒は1977年のシャポシュニコワ選手による「後方車輪」の技術開発を皮切りに器具の改良、ルール改正が推し進められ、現在では高低差のある2本の鉄棒と言っても過言ではない。鉄棒の基本技として〈前方車輪〉、〈後方車輪〉が挙げられる。これらの技は体を一直線に伸ばしたまま握ったバーを中心に回転する技であるが、いずれの技も指導現場では〈押し〉、〈ぬき〉、〈あふり〉の三つの技術を中心に指導が展開されるのが一般的である。段違い平行棒の場合でも、低棒の存在を除けば本質的な技術は同様のものが用いられると言える。これらの諸局面における空間定位の混乱事例として、倒立位である〈押し〉局面の前後感覚に混乱が生じていることがある。本研究の目的はこうした空間定位の混乱について倒立位と直立位を例に対比的に説明することである。発表では空間定位に着目した大学生の体操競技選手の修正指導事例について、発生運動学的な定位感の視点から反省的に記述していく。