[09方-ポ-16] トップアスリート及び指導者を対象としたスポーツ・インテグリティを脅かすトラブルの分析
スポーツ・インテグリティ教育のプログラム開発に向けた調査的研究
競技スポーツではドーピングや八百長など様々な問題が起きている。また、それらは個人の資質による問題だけでなく、国家ぐるみのドーピングやネットを用いた海外からの八百長など、個人の範疇を超えており、複雑化していることがわかる。さらに、こうした勝敗に関わる直接的な問題だけでなく、ハラスメント、ガバナンスの欠如、違法賭博など間接的な問題も生じている。こうした問題に対し、EOC(2017)では、スポーツのインテグリティに対する脅威の中心は、スポーツ競技の不正操作であるとし、優先的に予防や対策が取り組まれている。一方、国内においても実態に即したスポーツ・インテグリティ教育が求められるものの、トラブルに関する実態調査は十分に行われていない。そこで、本研究では国内のトップアスリートや指導者を対象としたスポーツ・インテグリティを脅かす8種類のトラブルを、3段階に区分し、それぞれの段階での経験頻度を調査することで、トラブルの実態を明らかにする。また、その結果を基にスポーツ・インテグリティ教育の内容構築を試論することを目的とする。調査方法について、労働災害では、1件の重大な事故の背後に多数の軽微な事故、更に多数の無傷の事故が存在するとされていることから、各トラブルの経験、葛藤、機会といった3段階をつけた項目での発生率を調査した。トラブルの種類について、選手や指導者を中心とした問題とし①セクハラ、②パワハラ、③暴力・暴言、④ドーピング、⑤八百長、⑥反社会的勢力との付き合い⑦違法薬物、⑧違法賭博の8種類のトラブルを選定した。調査対象は、各競技のオリンピンと強化指定選手50名、その指導者・強化スタッフ100名を対象とした。データ収集は、JOC によって開発されたスマートフォン向けアプリケーション「JOCアスリートアプリ」を用いて調査項目を設定することによって実施した。