[09方-ポ-32] 大学男子選手のサーブ動作の標準動作モデルについて
硬式テニスにおいてサーブは最も重要な技術の一つである。しかし、指導に役立てるという観点からサーブの動作パターンを詳細に検討したものは少ないようである。指導現場では、指導者の経験や勘に基づいた指導が主流であるが、サーブ動作の要点や、良い動作パターンを視覚的にプレーヤーに理解しやすい形で提示することが役立つと考えられる。Ae et al.(2007)は、熟練者の平均動作を標準動作モデルと呼び、変動係数を指標に学習者や未熟練者の動作を評価する手法を提案している。そこで本研究では、大学男子選手のサーブ動作の標準動作モデルを作成し、変動係数を指標に共通性の高い動きを抽出することを試みた。 対象者は大学男子選手28名(身長:1.73±0.05 m、 体重:66.2±5.2 kg)で、その競技レベルは、関東大学テニス選手権予選出場から全日本大学テニス選手権優勝までであった。模擬試合および公式試合中のサーブ動作を2台のデジタルビデオカメラを用いて撮影し、三次元DLT法を用いて身体計測点23点、ラケット5点およびボール1点の座標値を得た。ボール速度の最も大きかった試技を各選手について1試技選択し、Ae et al. (2007)の方法を用いて標準動作モデルを作成し、身体各部分及びラケットのベクトルの方向角、平均値、標準偏差および変動係数を算出した。共通性については、各身体部分の平均変動係数が全身体部分の平均変動係数より大きければ共通性が低く、小さければ共通性が高いと判断した。 対象試技のインパクト後のボールスピードは、170.0±14.9 km/hであった。全身体部分の平均変動係数は、X軸15.8±11.0%、Y軸18.4±12.1%、Z軸25.2±15.8%であった。右上肢の平均変動係数は、X軸22.7~24.7%、Y軸31.2~44.5%、Z軸23.2~31.7%で大きかったことから、共通性が低いと考えられる。しかし、右上肢の動きはラケットスピードへの貢献が大きいことから、ラケットやボールのスピードを決定する技術的に重要な部分であるとも解釈できる。