[03心-ポ-01] 指導者からの欲求支援・阻害行動が競技スポーツにおける心理社会的スキルの般化におよぼす影響
基本的心理欲求の充足や不満に着目して
競技スポーツを通じたライフスキル(Life Skills:LS)獲得のプロセスについて、競技スポーツにおける心理社会的スキル(Psychosocial Skills used in Competitive Sport:PS-CS)がスポーツ以外での生活場面に般化することでLSになると考えられている。そして、Life Development Intervention/ Basic Needs Theoryモデル(Hodge et al., 2013)に基づくと、競技スポーツを通じたLS獲得において、競技スポーツにおける基本的心理欲求(Basic Phycological Needs in competitive sport:BPN-CS)がPS-CSの般化の要因となり、BPN-CSには指導者からの欲求支援・阻害行動が影響を及ぼすと推察される。そこで本研究の目的は、指導者からの欲求支援・阻害行動(肖・外山,2020)がBPN-CSの充足・不満(Nishimura and Suzuki,2016)に影響を及ぼし、さらに島本ほか(2013)の枠組みに基づいたPS-CSの般化(藪中ほか,2022)に及ぼす影響を検討することとした。調査は2時点での縦断調査を実施し、分析対象者は大学生アスリート144名(男性103名、女性44名、平均年齢19.7±1.0歳)であった。分析は共分散構造分析を実施した。その結果、指導者からの欲求支援・阻害行動がBPN-CSの充足・不満のそれぞれに正の影響を及ぼしていた(順に、β=.46、p<.01/β=.61、p<.01)。そして、「ストレスマネジメント」「感謝する心」「コミュニケーション」「礼儀・マナー」「最善の努力」「責任ある行動」「謙虚な心」の各スキルの般化に対して、BPN-CSの充足が正の影響(β=.25―.46、p<.05もしくはp<.01)、不満が負の影響(β=-.22―-.42、p<.01)を及ぼしていた。「目標設定」「体調管理」に対しては、BPN-CSの充足が正の影響(順に、β=.43、p<.01/β=.26、†<.10)を及ぼしていた。「考える力」については、共分散構造分析における適合度指標が十分な値を示さなかった。以上から、BPN-CSの充足や不満は指導者からの欲求支援・阻害行動による影響を受けることが示唆された。そして、PS-CSの般化の促進要因はBPN-CSの充足であり、阻害要因は不満であることが一部示された。