[03心-ポ-43] 投球・送球イップスを呈する野球選手における投球動作時の心理状態
イップスは、細かいコントロールが求められる自動化された運動スキルの遂行中に生じる慢性的な運動障害であり (向・古賀, 2019)、野球やゴルフ、クリケット等の種目において確認されている。イップスはスポーツ競技者のパフォーマンスを低下させ、彼らのキャリアに大きなダメージを与える。それ故、イップスの発症に関与する諸因子を明らかにすることは重要な課題であり、これまで、イップスの発症要因に関する多くの研究がなされてきた。そこでは、イップスの発症には複数の要因が関与していることが指摘されているが、本研究では、その中でも代表的な要因の一つである「不安」に着目をする。先行研究では、イップスを呈する競技者は不安の尺度得点がその他の競技者に比べて高いことがわかっている (例 Chambers & Marshall, 2017)。しかしながら、イップスと不安の関連を示した研究の大半はゴルファーのイップスを対象にしたものであり、その他の競技種目を対象にした研究はほとんどない。そこで、本研究では、国内においてイップスに苦しむ競技者の報告が多くなされている野球選手の投球・送球イップスと不安との関連を検証することを目的とする。対象者は投球・送球イップスの発症を本人と周囲の他者が共に認識する者10名 (イップス群) と、投球・送球イップスの発症を本人と周囲の他者が一度も認識したことがない者10名 (非イップス群) であった。全対象者に不安尺度 (「新版STAI:STAI-JYZ」(肥田野他, 2000) )に回答してもらい、その後に、投球課題を行なってもらった。なお、投球動作時に「心拍数」の測定も行った。その結果、状態不安尺度の得点がイップス群の方が非イップス群に比べ有意に高い得点が認められた。心拍数では群間の有意差は認められなかった。【付記】本研究は、「令和3年度熊本学園大学学術研究助成」の助成金を受けて実施した。