[11教-ポ-07] 教科体育における学習成果の認知が運動・スポーツへの関わりに対する意識に及ぼす影響
本研究では、中学校の体育授業における生徒の学習成果の認知が、日々の運動やスポーツへの関わりに及ぼす影響について検討することを目的とした。 調査は、2021年6月から7月に公立中学校の生徒1596名を対象に、小野ほか(2018)の運動技術の習得、コミュニケーション能力の涵養、身体と運動に関する知識の修得、運動の魅力の感受からなる「体育学習観尺度」を参考として作成した学習成果を評価する項目群(以下「学習成果」)と、運動やスポーツへの関わりを評価する項目群(以下「運動参与」)から構成される調査票を用いて実施した。その内、調査に不備なく回答した1433名(男子717名、女子716名 平均年齢13.18±.91)を分析対象とした(有効回答率89.8%)。 まず、学習成果について確認的因子分析を実施した結果、因子モデルの適合度は十分な値であることが確認された。次に、運動参与については、現在の運動・スポーツをする・みる・支えるという多様な関わり方をもとにして項目を作成し、得られたデータに探索的因子分析を実施した結果、「運動・スポーツからの回避(以下「回避」)、「運動やスポーツへの期待」(以下「期待」)、「運動やスポーツを通じた充足感」(以下「充足感」)からなる3下位尺度16項目の因子が構成された。その後、学習成果と運動参与において男女ごとに相関分析を行った結果、学習成果と運動参与の「期待」および「充足感」との間には有意な正の関連が、「回避」との間には有意な負の関連がそれぞれ認められた(いずれもp<.001)。その後、男女ごとに体育授業の学習成果を独立変数、運動参与を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)の結果、男女ともに「運動技術の習得」が期待と充足感に、「コミュニケーション能力の涵養」が充足感に、運動の魅力の感受が期待にそれぞれ有意な正の影響を及ぼしていた。また、運動の魅力の感受は男女ともに回避に有意な負の影響を及ぼすことが明らかになった。