[11教-ポ-09] 水難事故防止を想定した水からの安全な脱出方法に関する研究
小学生児童を対象として
学校体育の水泳授業は水難事故から身を守る技術を身につけるためにも役立つ。例えば今年4月に北海道知床沖で発生した遊覧船による水難事故では、海水温が低かったこともあり、水に浮き呼吸を確保する技術だけではなく、安全に水から脱出する技術も必要であったと考えられる。このような技術は川や海などへの意図しない転落からの脱出だけでなく、台風などの大雨による浸水からの脱出や、地震による津波に流された際にも命を守るために必要になる技術と考えられる。このような水からの脱出に関する技術は、近年水難事故防止に役立つとされる水の安全に関する総合的技術態度(ウォーターコンピテンス)の17項目の1つにも挙げられている。しかしその一方で、我が国においては水からの脱出はあまり意識されておらず、また身につける機会も乏しいのが現状である。具体的には授業を実施するプールは足のつく水深や水面とプールサイドの差がわずか、もしくはほとんどない(オーバーフロー)環境下で実施されており、 水から上がるのが困難であるという経験をする児童はほとんどいない。我々の研究グループではこれまで大学生を対象として水からの脱出問題を扱ってきた。水からの脱出の様子を系統的に分類し脱出容易度として測定した。この場合、脱出容易度に影響を与える要因としては①性別、②水面からのプールサイドの高さ、③水深の順に影響を与え、被験者の泳力は大きな影響を与えなかった。本研究では児童を対象として先行研究と同様に水からの脱出問題について、以下の条件下で脱出容易度を測定した。 ①水面からのプールサイドの高さ(0cm/40cm)②状態(水着/ライフジャケット)③水深(100cm/200cm)④プールサイドの形状(垂直な壁/凸状の壁)。本発表では児童に対して水からの脱出容易度に影響を与える要因を探り、プールにおいて水からの脱出技術の習得方法について検討する。