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[生涯スポーツ-C-04] 高齢者の運動習慣を形成する運動実施歴パターンの分析(社)
統計資料の二次分析を通じて
本研究の目的は、高齢者の運動習慣と過去の運動実施歴の関連を明らかにすることである。従来の研究では、過去の運動経験が運動習慣に影響を及ぼすことが報告されてきた。本研究では、高齢者の運動経験と運動習慣の関連に関するさらなる知見の提供を目的として、日本全国を対象とした社会調査データを用いて高齢者の運動習慣の形成に効果的な運動実施歴を探索する。調査データに映し出されるパターンと高齢者の運動習慣との関連を検討することで、実社会の現状に即した、より現実的な運動習慣促進策の構築に貢献することが期待される。分析では2021年に実施されたスポーツ実施状況等に関する世論調査の二次データを使用した。分析対象は、65歳以上でかつ欠損値のない2,066名(女性994名、男性1,072名)とした。本研究ではまず、小学生時代から50代までの各年代における運動・スポーツの実施頻度を用いた潜在クラス分析を行い、運動実施歴のパターンを識別した。その結果、一貫して高頻度で運動を実施してきた「常時高頻度群」、学生期は比較的高頻度であったものの、その後は運動の実施頻度が低下した「学生期高頻度群」、そして一貫して運動の頻度が低い「常時低頻度群」の3クラスに分類された。運動習慣との関連を分析したところ、「高頻度群」は「常時低頻度群」よりも適度な運動習慣を形成している確率が高い一方で、「学生期高頻度群」」は一貫しない結果が確認された。さらに、補足的な分析から、学生時代に運動頻度が高く卒業後に頻度が低下した群よりも、学生時代の頻度が低く卒業後に頻度が上昇した群のほうが、高齢後の運動習慣が形成される確率が高くなる可能性が示唆された。本報告では、最後に、高齢者の運動習慣形成のための施策と、本研究の限界について議論する。