The 73rd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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生涯スポーツ研究部会 » 【課題C】人生100年時代に向けていかに人々のスポーツ権を保障するか

生涯スポーツ研究部会【課題C】口頭発表③

Thu. Aug 31, 2023 1:30 PM - 2:14 PM RY306 (良心館3階RY306番教室)

Chair: Hiroshi Mizukami

1:30 PM - 1:44 PM

[生涯スポーツ-C-07] フィジカルリテラシー概念に関する諸外国の動向整理(政,教,経,社)

*Hiromi Nakamura1 (1. Japan Sport Council/ Japan Institute of Sports Sciences)

第3期スポーツ基本計画では「生涯にわたって運動やスポーツを継続し、心身共に健康で幸福な生活を営むことができる資質や能力(いわゆる『フィジカルリテラシー』)」が言及され、学校保健体育等を通じてその育成を目指すことが明記された。既にスポーツ庁、日本スポーツ協会、日本スポーツ振興センター等が、フィジカルリテラシー概念に紐づく調査研究等を行っている。本発表はこれらの事業が参照している諸外国の動向について、最新事例も踏まえ論点整理を試みる。
フィジカルリテラシーの主唱者であるホワイトヘッド(2019)は、本概念の基本的な枠組みは哲学に根差すものであるという20年来の論旨を強調し、①世界各国に普及してきたことは、本概念が人間の本質に共通の自発的な営みであることの証左とする一方、②その概念普及や定義づけは、各国の風土や文化を反映した議論がなされることが好ましいとする(三上2021、岡出2022)。上記の②に関しホワイトヘッドは、国ぐるみの概念整理が先行した豪州、カナダに加え、ニュージーランド、米国等の取組を紹介している。その後も2022年にはアイルランドの全島共通合意が策定されるなど、かかる国ぐるみの動きは加速している。これらの国々では高齢者や障害者も含め、すべての人が生涯にわたって日常的に身体を動かすことができる包摂的な環境整備を目指す例も多い。また上記の①の点に関し、欧州委員会が助成する共同研究は「生涯学習のためのキーコンピテンシー枠組み」の見直し作業と紐づけてフィジカルリテラシーを論じており、ホワイトヘッドがいうところの人間の存在、つまり「人と社会とのかかわり」においてスポーツがもたらしうる教育的価値に着目したものと言える。
我が国の関係者を広く巻き込んだ本概念の議論の機会はまだ実現していない。こうした諸外国事例を参照に更なる議論が進むことが期待される。