[03心-ポ-23] スポーツ場面におけるコロナに伴ったストレス体験後の心理的成長
セルフ・コンパッションとソーシャルサポートに着目して
1. 背景
新型コロナウイルス感染症 (以下、コロナ) のパンデミックの影響は、日常生活場面だけでなくスポーツ界にまで及び、数多くのスポーツイベントの延期や中止、練習や仲間との交流の制約などの未曾有の事態を招き、スポーツ実施者の心身にも大きな影響を与えた。一方、コロナに伴った多様なストレス体験を契機に、肯定的な心理的変容を遂げる個人の存在も確認されている (e.g., Van der Hallen & Godor, 2022)。しかし、コロナ禍におけるスポーツ特有のストレス体験とスポーツ実施者の成長との関連を検討した研究はほとんどない。本研究では、先行研究においてストレス関連成長との関連性が示されているセルフ・コンパッションとソーシャルサポートに着目し、スポーツ場面におけるコロナに伴ったストレス体験後の成長に関連する要因を検討することを目的とした。
2. 方法
1) 対象者と手続き 調査は、株式会社クロス・マーケティングに委託し、18〜60歳のスポーツ実施者1275名(平均年齢41.1±11.06歳、男性741名、女性531名、その他3名)を対象に実施した。調査は、筆頭著者の所属機関における倫理委員会の承認を得て実施された。
2) 主な調査内容 人口統計学的変数、セルフ・コンパッション反応尺度 (宮川・谷口, 2016)、ソーシャルサポート尺度 (土屋・中込, 1994)、スポーツ選手用ストレス関連成長尺度 (煙山・尼崎, 2016)
3. 結果と考察
セルフ・コンパッションとソーシャルサポートを説明変数、ストレス関連成長を目的変数として重回帰分析を行った結果、2つの説明変数が、ストレス関連成長に対して正の影響を及ぼしていた。これらの結果より、コロナ関連のスポーツ特有のストレスフルな出来事に直面した際に、自分に対して慈しみの気持ちを向け、周囲からの支援に満足をしている者ほど、肯定的な心理的変容が促進されている可能性が示唆された。