[03心-ポ-57] 対視覚刺激協調ダイナミクスと相対位相差の関係
対視覚刺激協調ダイナミクスは個人内の体肢間協調ダイナミクスと類似した同調プロセスに制約されると考えられてきた。相対位相差0度(同相)及び180度(逆相)で協調関係は安定し、その安定性は同相で高く、同相・逆相以外の位相で協調を保つ事は困難となる。ただし、先行研究の多くでは往復する視覚刺激が用いられ、視点移動の制約はなかった。往復運動は特徴的事象である切り返しが協調ダイナミクスに影響を与えるため、特徴的事象のない円運動では異なる協調ダイナミクスとなる可能性がある。また、左右大脳半球間の情報交換は協調ダイナミクスに影響を及ぼすため、視覚刺激を片方の視野に提示してその対側体肢を動かす場合の協調ダイナミクスは視点移動を制約しない場合とは異なる可能性がある。 そこで、円運動を行う視覚刺激を左視野に提示し、この視覚刺激と協調させて右手で円運動する際の協調ダイナミクスを明らかにする実験を行った。モニタ上に固定点Oと0.5Hzで円運動する点Pを映し、被験者(N=17)は点Oを注視した。点Pと協調させて右手を動かす(水平面上で回転板を回す)タスクは、点Pより90度先の位相で手を動かす、同相で動かす、90度遅れた位相で動かす、逆相で動かすという4条件とした。実験の結果、 0度条件が90度及び180度条件よりも有意に協調動作が安定していた。また、 0度及び-90度条件は90度及び180度条件よりも有意に協調動作が正確であった。これらの結果は、同相で協調関係が安定し正確であるという先行研究結果と一致したが、逆相と90度での協調ダイナミクスに差が認められないことと、-90度と同相についても差が認められないことは、先行研究結果と異なった。前者は、タスク難度が高い事によるフロア効果の影響が考えられた。後者は、-90度条件では視覚刺激が手運動到達目標として機能し、予測的制御を容易にしていた可能性が考えられた。