[03心-ポ-69] 野球の審判員における心理的スキルと審判経験年数および年齢との関係
【緒言】スポーツの審判員は、試合中に発生する様々なプレーに対して、素早く適切にジャッジしなければいけない。審判員も競技選手と同様に心理的なスキルが必要と考えられ、審判員を対象とした心理面のサポートや研究が進められている。野球では、2015年に審判資格制度が開始され、制度発足当初の報告では、審判経験年数と心理的スキルの間に有意な正の相関がみられた。近年、心理面に対する意識も高まりつつあり、心理的スキルに与える要因を確認する必要がある。そこで本研究では、審判資格別に審判の心理的スキルと審判経験年数および年齢との関係を明らかにすることを目的とした。 【方法】調査対象者は254名の野球審判員であった(資格なし:62名、2級または3級:58名、国際資格または1級:134名)。調査には審判の心理的スキルを評価するために作成された質問紙を用いて、自己コントロール、表出力、意欲、自信、コミュニケーション、集中力の6因子に関連する各4項目に対する回答の合計を心理スキル得点とした。 【結果及び考察】資格を持たない審判員では、自信以外の5因子で審判経験年数と有意な正の相関がみられ、表出力及びコミュニケーションで年齢と有意であった。2級または3級では、自己コントロール及び集中力で審判経験年数と有意であり、自己コントロールで年齢と有意であった。国際または1級では、自己コントロール及びコミュニケーションで経験年数と有意であり、年齢とは有意な相関は得られなかった。2019年の報告と比べて、より上位の資格を有する審判員ほど、年齢や経験年数との関係がみられなかった。このことは審判員の心理的スキルに年齢や競技経験以外の要素がより強く影響していることを示し、心理的な要因について学ぶことの重要性がうかがわれ、審判員に求められる心理的スキルについて情報提供することも大切といえる。