[03心-ポ-20] サッカー選手におけるレジリエンスが運動再投入と意思決定再投入に及ぼす影響
先行研究により、運動再投入と意思決定再投入の傾向があるアスリートは、自動化された動きが注意の高まりによって妨害されることで、パフォーマンスを低下させることが明らかにされている(Masters, 1992)。その一方で、プレッシャー下でも優れたパフォーマンスを発揮できるオリンピック選手は、レジリエンスが高い傾向にあることが明らかにされている(Fletcher & Sarkar, 2012)。本研究では、プレッシャー下でもポジティブに作用する個人特性のレジリエンスがネガティブに作用する運動再投入と意思決定再投入に及ぼす影響について検討することを目的とした。調査対象者は、国内外のプロ・セミプロリーグに所属する男性35名のサッカー選手(年齢18歳以上)であった。調査対象者には、レジリエンス尺度のThe CD-RISC(Campbell-Sills & Stein, 2007)と運動再投入尺度のMSRS(Kawabata & Imanaka, 2019)、意思決定再投入尺度のDSRS(Kawabata & Imanaka, 2019)に回答させた。なお、MSRSは動作過程に関する意識と自身の動作が他者へどのように映るのかという自意識の下位尺度から構成されており、DSRSは意思決定の過程を意識的に確認しようとする傾向と過去の間違った判断を否定的に評価しようとする傾向の下位尺度から構成されている。本研究では、レジリエンス尺度の合計得点と、運動再投入尺度の2つの下位尺度、意思決定再投入尺度の2つの下位尺度の間でPearsonの相関分析を行った。その結果、意思決定再投入尺度の下位尺度である、過去の間違った判断を否定的に評価しようとする傾向とレジリエンスの間にのみ負の相関が確認された。よって、プレッシャー下における意思決定について反芻傾向が強いサッカー選手には、レジリエンスは効果的に作用する個人特性であるといえよう。