[03心-ポ-24] 情動知能と自己効力感が運動課題前後の脳波と気分に与える影響
運動経験と心理・社会的発達に関連する研究は多くなされており、それぞれの運動経験から様々な結果が示されている。個々で獲得した情動知能によって、その後の運動経験や成功失敗体験の受け止め方は異なるのだろうか。本研究では、情動知能と自己効力感の得点が、ゴルフのパッティング動作前後の脳波及び気分へ影響を与えているか検討した。
運動経験のある大学生及び大学院生(平均年齢21.0±1.33歳)を対象とし、10球のパッティング動作を行ってもらった。事前に情動知能測定尺度(以下、EQS)と運動に対する自己効力感尺度に回答してもらい、課題前後の脳波の測定と気分の評価を行った。脳波はフューテック社製の簡易型脳波計Brain-Pro(FM-939)を使用し、「Analyzer+」によりデータを取得した。瞬きや開眼時にもアーチファクト・ノイズが混入しにくい「センサープロ」を使用し、センサー電極は10/20法による頭頂部C3・C4、左耳たぶA1の3部位に装着し、脳波はα1波、α2派、β波を分析対象とした。
運動課題前後の脳波への影響を重回帰分析のステップワイズ法を用いて分析した結果、運動前後のα1波にはEQSの「自己洞察」「リーダーシップ」、課題後のβ波にはEQSの「自己コントロール」が有意な正の影響を与えていた。また、課題前後の脳波の変化量には、α1波にはEQSの「自己コントロール」が負の影響を与えており、自己コントロールの得点が高いほどα1波の変化量は小さくなることが示された。気分の変化量に対しては、「緊張」には「自己洞察」「状況洞察」が有意な負の影響を与えていた。「自己洞察」は自己の感情の理解に該当し、自己評価や自信の程度にも関連し、「自己コントロール」は自分の行動をコントロールする能力に該当し、自制心や自己決定に関わるとされており、これらが課題前後の脳波に影響を与えていることが示唆された。