[03心-ポ-48] フィギュアスケート競技者に着目した「不安」「緊張」と実力発揮との関連性
競技場面において、スポーツ選手は「不安」や「緊張」など様々な心理的プレッシャーを受ける事で、競技パフォーマンスの発揮が妨害される事がある(猪俣,1986)。
したがって本研究では、フィギュアスケート競技者に着目した「不安」及び「緊張」と実力発揮との関連性を明らかにし、実力発揮へ繋げるための効果的な活用方法を追求する事を目的として、日本学生氷上選手権大会出場経験があるフィギュアスケート競技者3名を対象に半構造化面接を実施した。インタビュー結果の分析には、グラウンデッドセオリーアプローチ(⼽⽊, 2016)を⽤いた。
本研究結果において、フィギュアスケート競技者における「不安」及び「緊張」を実力発揮に繋げる効果的な要素として、「緊張からの解放」「失敗に対する覚悟」「試合での緊張の向き合い方」の3つが挙げられた。1つ目の「緊張からの解放」では、緊張場面において「緊張しているという事は集中しているという事」というように、緊張をポジティブに捉える事で集中力が高まる事がわかった。2つ目の「失敗に対する覚悟」では、日頃から失敗を恐れず覚悟を持って練習する事が、試合中の失敗に対して最大限の努力の結果として受容する心理的受け皿に繋がり、失敗後も動揺せず緊張をコントロールできる可能性に繋がると示された。最後に3つ目の「試合での緊張の向き合い方」では、対象者は「日頃の努力を基に成功の可能性を信じる」と話しており、これはBandura(1997)の「自己効力感とは自分の成功の可能性を認識する事」を指示している事から、実力発揮に繋がると推察された。以上3点に加え、ルーティーンを用いて外的要因に影響されないいつも通りの空間を作る事が、安心感に繋がり実力発揮の一助になると示唆された。
以上から、上記3つの要素とルーティーンの確立が「不安」及び「緊張」を抱く状況下における実力発揮の実現に効果的であると考えられた。