[03心-ポ-46] アスリートの制御焦点が試合中の対処方略とパフォーマンスに及ぼす影響
人の快・不快に対する接近と回避は、促進焦点と防止焦点という制御焦点によってコントロールされる(Higgins, 1997)。さらに、個人の制御焦点と目標達成に向けた方略が適合することで、パフォーマンスは向上することが示されており(Higgins, 2000)、アスリートは制御焦点に適合した方略を用いてパフォーマンスを高めているものと考えられる。よって、本研究の目的は、アスリートの制御焦点が試合中の対処方略とパフォーマンスに及ぼす影響について検討することとした。調査はA大学の体育専攻学生を対象とし、Googleフォームを用いて実施された。分析対象者は325名(男性155名、女性166名、回答なし4名)であった。対象者にはPromotion/Prevention Focus Scale邦訳版(尾崎・唐沢,2011)をスポーツ場面に適用させた尺度、日本語版Coping Inventory for Competitive Sports(相川・高井,2022)、競技パフォーマンスに対する自己評価尺度(上野・小塩,2016)に回答させた。分析の結果、促進焦点群は防止焦点群よりも、思考のコントロールや心的イメージ、リラクセーション、努力の消費、論理的分析の得点が有意に高かった。防止焦点群は促進焦点群よりも、不快な感情の発散と離脱・諦めの得点が有意に高かった。また、促進焦点群の心的イメージや防止焦点群の思考のコントロールは、競技パフォーマンスに対する自己評価に有意な正の影響を与えた。本研究の結果はアスリートの制御焦点の特徴を反映しているものと考えられ、制御焦点の違いは試合中の対処方略に影響を与えるものと考えられる。また、制御焦点の違いによってパフォーマンスを向上させる対処方略は異なることも示され、アスリートの制御焦点に適合する方略の提案に貢献できる知見が得られたといえる。