[05バ-ポ-05] 立位上肢運動での身体内側方向および外側方向への姿勢制御
立位中に上肢での力発揮や運動を行う際は、脚や体幹の活動により、姿勢が保持される必要がある。本研究では、上肢での力発揮の方向に着目し、身体の内側方向への力発揮と、外側方向への力発揮における、姿勢制御を比較することを目的とした。 4名の健常成人被験者は、肘関節を前方に90°屈曲した立位姿勢から、前方に設置されたハンドルを保持し、右手および左手で、水平面内の指示された方向へ力を発揮する課題を行った。力発揮の強さは、被験者の体重の5%と設定した。力発揮の方向として、まっすぐ手前を0°として、内側および外側に30°ないし60°の5方向を設定した。力発揮の手(左右)および方向の各条件に対して、各20回、計200試行行った。フォースプレートを用いて、課題中遂行の床反力を計測し、床反力水平成分の大きさが最大となる時刻における、床反力水平成分の方向を算出した。床反力水平成分の方向のばらつきは、方向統計学的分析によって定量した。得られた値を、内側への力発揮条件と外側への力発揮条件の間で比較した。
右手で内側60°に力発揮をする際は、床反力水平成分は、59–68°(最小値–最大値)の方向を向いており、試行間のばらつき(1-R)は0.004–0.014°であった。一方、右手で外側60°に力発揮をする際は、床反力水平成分は63–69°の方向を向いており、試行間のばらつきは0.011–0.022°であった。これらの結果は、上肢での力発揮の方向が、内側であった場合は、外側と比較して、床反力の再現性が高いということを示しており、すなわち身体重心や体幹に近づける方向での力発揮の方が、姿勢制御が容易である可能性が示唆される。