The 73rd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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専門領域別 » バイオメカニクス

バイオメカニクス/ポスター発表

Fri. Sep 1, 2023 1:30 PM - 2:30 PM RY205 (良心館2階RY205番教室)

[05バ-ポ-04] 異なるステップ距離における重心の前後方向の動的安定性戦略

*Kanta Kobayashi1, Masahiro Shinya1 (1. Hiroshima University)


ヒトが立位でのステップや歩行を行う際は、重心の安定性が長期的に保たれなければならない。一方で、短期的にみると、移動したい方向に倒れるような、一時的に重心の不安定となる局面が、しばしば観察される。このような一時的な重心の不安定化は、ステップ距離が短い場合は不要である一方で、長い距離でのステップを行う際は、必然的に表れると考えられる。本研究では、健常成人が様々な距離でのステップを行う際の、重心の前後方向の動的安定性戦略を明らかにすることを目的とした。
 被験者は、健常な成人6名(男性:3名、女性:3名)であった。静止立位から、最大歩幅の100%、80%、60%、40%、20%の距離のステップを、それぞれ10試行行った。モーションキャプチャーシステムを用いて、全身の動作データを計測した。身体重心の位置と速度、および、後続脚のつま先に貼付したマーカー位置から、先行脚着地直前のタイミングにおける安定マージン(Margin of Stability: MoS)を算出した。足が地面と接していない局面のないステップに対して、脚長で正規化されたステップ距離とMoSの関係を線形回帰分析によって分析し、MoSが負となる局面が現れる歩幅を推定した。
6名の被験者におけるMoSが0となる歩幅は、脚長比で、-4.6、35.1、36.5、37.5、40.2、51.4%であった。6名中5名の被験者において、脚長の30–50%のステップ距離を境に、一時的に姿勢を不安定化させる戦略への切り替えが観察された。一方、1名の被験者は、いかなる歩幅での前方ステップにおいても、MoSが負となる局面が存在する戦略をとっていた。このような重心安定性戦略の切り替えは、被験者の姿勢制御能力やリスク志向性を反映している可能性があり、不確実性を伴う状況における歩行戦略や、子どもの運動発達を分析する際の指標となることが期待される。