[08測-ポ-23] 異なる熟練度の卓球選手におけるラリー中の視線パターンの違い
卓球ラリーのような厳しい時間的制約下での打球パフォーマンスでは、予測的に動作を遂行することが要求される。そのため、熟練卓球選手は、より瞬間的な視覚認知能力を有しており、その能力が視線パターンに反映される可能性がある。そのため、卓球ラリーを例に、熟練卓球選手の視線パターンを明らかにすることは、球技スポーツにおける予測的な動作に係る視覚認知能力の理解をより促進できるものと期待される。本研究では、熟練度の異なる卓球選手を対象に卓球ラリー中の視線を評価し、視線パターンの違いを明らかにすることを目的とした。対象者は実験参加にあたり、視線計測装置を装着した。対象者は大学卓球部に所属する男子学生13名とし、熟練群と準熟練群の2グループに分けた。熟練群は全日本選手権出場者の6名とし、準熟練群は全日本選手権に出場経験はないが10年以上卓球をしている7名とした。本研究におけるラリーは、メトロノームに合わせた一定テンポで、かつフォアハンドクロスのみで打ち合う形式とした。視線パターンは、視野カメラ上に映る対象者の視線位置と接近するボール位置の差を算出することで定量化した。その結果、接近するボールがワンバウンドした時刻における視線位置とボール位置の乖離度は、準熟練者に比べ熟練者で有意に大きかった。本研究結果は、一定テンポのラリー中、熟練卓球選手は接近するボールからより早い段階で視線を離すことを示しており、ボール軌道を予測する能力の違いが視線パターンに反映されていることが示唆された。