[11教-ポ-22] 「文検」研究に見る教師教育のあり方に関する一考察
「文検」體操科の研究課題整理に焦点づけて
「文検」とは、「文部省師範学校中学校高等女学校教員検定試験」の略称のことであり、戦前の教育、教員養成の一つの流れを形成した制度である。
これまでの「文検」研究において、研究の必要性を示唆したのは寺崎昌男であった。寺崎は、1986年に「文検」研究会を組織して研究に着手し、その成果が『「文検」の研究』(学文社)として1997年に公刊された。その後、研究成果の第2弾として『「文検」試験問題の研究』(学文社)が2003年に公刊された。同書は「英語科」「数学科」「歴史科」「家事及裁縫科」「公民科」の各学科目を取り上げ、広範に「文検」の検討を行った。2009年になって井上えり子『「文検家事科」の研究』(学文社)が公刊された。しかしながら、語学系学科目他、自然科学系学科目、実技系学科目など、多くの科目で分析が残されている。
よって、本研究は、未だ詳細な分析が行われていない一科目として、「文検」體操科その 実態を明らかにすべく先行研究のレビューを行い、研究課題の整理を行った。
「文検」體操科は本来中等教員養成の仕組みであり、その解明とともに「文検」體操科を体育学研究(試験委員の大学という場における研究)、「文検」體操科の試験問題(国家試験という枠内で問われる体育学)、受験生の受験動機(中等教員の社会的地位獲得という上昇志向性、教員資質の向上意欲など)の三者の結節点としてとらえ分析し、現在の体育科教育学を見つめ直すことができればと考える。近年社会的に問われている教師教育の質的保証を含めた教員養成の在り方や教員養成における実務家教員への期待や役割(本研究では、様々なキャリアパスをとおして、苦労の末小学校教員・旧制中学校教員へなっている事例が多くみられる)などへ波及効果が期待できると考えている。(本研究はJSPS科研費21K11539の助成を受けたものです。)